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「人生に乾杯!」
−KONYEC−
見終えた瞬間、ワァオー!!と叫びたくなった。
この人間たちのカッコよさは何だろう。
こういう映画が大好きだー!と心底思える作品に出会えると本当にうれしくなる。
映画は何の予備知識もなく見ることにしているので、
今回も事前に知っていたのは、ポスター(下記写真)を見て、
なんとなく「明日に向かって撃て!」を思い浮かべながら、主人公が老人なんだということと、
ハンガリー映画らしいという程度のことだった。
始まって5分もすると、「あ、この感じ、好きかも」と直感した。
ふと思い出していたのが、アキ・カウリスマキ監督の「過去のない男」。
アキ監督はフィンランドの名匠だが、ハンガリーもフィンランドもアジアにルーツがある民族
というところに共通点があるのかもしれないし、ないのかもしれないが、自分の頭の中では繋がっていた。
もう何10年もそこで生活してきたかのような自然なたたずまいを、
過不足なく淡々と映し出す映像が美しくもあり、ホッとさせてもくれる。
あくまで作られた物語であるのを承知しながら、虚構の中に真実を見せてくれるような映画は粋だ。
主人公のエミル・キシュ(エミル・ケレシュ)は、81才のお爺さん。
僅かな年金暮らしでは、家賃の支払いも滞りがちである。
とうとう借金のとりたてで、妻のへディ・フェレギ(テリ・フェルディ)が一番の誇りにしていた
「ダイヤのイヤリング」も取られてしまうし、エミルも大切な愛車のチャイカだけは手放したくなかったのだが…。
事件は、突如、起きる。
エミルがピカピカのチャイカに乗って(ガソリンは隣の車から拝借!)、
隠し持っていたトカレフ(ソ連製軍用拳銃)で郵便局強盗をしてしまうのだ。
人生初めての強盗はとても紳士的で、順番待ちで並んでるおばちゃんには、
「すぐに終わるのでお待ち下さい」なんて言ってて、ユーモアたっぷりの強盗シーンなのが笑える。
その後、妻のへディも加わって、のらりくらりと強盗を繰り返す老夫婦と、
なんとも間抜けな警察官たちの追跡劇が面白可笑しく描かれる。
話の伏線として、警察官側には別居中の夫婦がいて、微妙に老夫婦と対比されてるのが面白く、
さらにクライマックスにちょっとしたミラクルがあったりして、なかなか感動的なのもよい。
不老不死は太古からの決して叶わぬ願いではあるが、
それにしても最近の日本でのアンチエイジング流行は、少々過剰ではないか。
確かに見た目がまるで変わらない女優さんとか、
平均寿命を遙かに超えてもぴんぴんしている老人をみると感心してしまうが、
この映画の登場人物は、腰痛もちだったり糖尿病だったりするごく普通の老人でありながら、
やたらとカッコイイのが何とも痛快である。
「人生に乾杯!」だなんてベタなタイトルだが、
あのエンディングをみたら、全くピッタリだと思った。
あまり多くを語らないのに、すごく伝わってくるのはなぜだろう。
そんな映画、そんな人間は、理想だなと思う。
人生の終焉と察したへディが「ただ1つ心残りなのは、海をみれなかったこと」と言うシーンがある。
しかし、あきらめない人生の先には、道が続いていくのだ。
今作が長編デビューとなるガーボル監督、自分と同年代ながらすごい!
銀座シネスイッチ
DATA
ハンガリー映画/2007年/107分/監督(ガーボル・ロホニ)/
製作(モーニカ・メーチュ、エルネー・メシュテルハーズィ)/
脚本(バラージュ・ロヴァシュ)/原作(ポジュガイ・ジョルト)/音楽(ガーボル・マダラース)/
出演(エミル・ケレシュ、テリ・フェルディ、ユディト・シェル、ゾルターン・シュミエド)
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