「イン・ザ・ヒーロー」
-IN THE HERO-
 
 
 
戦隊モノ第一号は、秘密戦隊ゴレンジャー(1975-77)らしい。
次いで「ジャッカー電撃隊」、「バトルフィーバー」、「電子戦隊デンジマン」、「太陽戦隊サンバルカン」から、
現在の「烈車戦隊トッキュウジャー」まで連綿と続く長寿・人気シリーズになっている。
 
スーツアクターは和製英語で、海外では「スタント」や「スーツ・パフォーマー」といわれるようだ。
主役を演じる唐沢寿明は、東映アクションクラブでスーツアクターを務めた経験をもつ。
仮面ライダーシリーズで唯一顔(半分)が見える「ライダーマン」は、唐沢であった!
共演の寺島進もスーツアクター経験者で、福士蒼太はスーツを着てもらう側の仮面ライダーフォーゼである。
別れた元妻役の和久井映見もよかったが、やはりこれは「唐沢寿明の映画」である。
 
彼の出演作は主に三谷幸喜作品でみてきた。
主役だった「ラヂオの時間」(97)や「みんなの家」(01)をはじめ、「THE 有頂天ホテル」(06)、
「ザ・マジックアワー」(08)、「ステキな金縛り」(11)などいずれも面白かったが、特に注目してなかった。
今作をみて初めて、その男気溢れる役づくりに惹かれたが、トーク番組などを見てみると、
素顔の本人と役柄とが全く同じで、むしろ本人の方が魅力的なくらいだった。
今の時代には珍しいくらい一本筋の通った男っぽさが実にカッコイイ。
今作中には「くさい台詞」も少なくないが、
全く陳腐に聞こえないのは唐沢本人が普段使っている言葉だからかもしれない。
特撮ヒーローの中にいるスーツアクター役の俳優である唐沢寿明の映画。
謂わば、唐沢寿明のマトリョーシカ的な変身映画である(笑)。
 
スーツアクターとは、黒子であり、裏方である。
決して表に出ないが、彼らがいなければ表舞台も成立しない。
そういった影の存在にスポットを当てようとするアイデアがいい。
プロデューサーの李鳳宇は、「パッチギ!」(04)や「フラガール」(06)を世に出してきた人で、
今作がこれらヒット作の系譜に連なるのも納得である。
また、共同脚本の担当が水野敬也という選択もよかったと思う。
彼のベストセラー「夢を叶えるゾウ」は、非常に胡散臭いガネーシャという神様が悪徳商売まがいの課題を設定し、
半信半疑の主人公がこなすうちに運が開けていくというユニークな物語だった。
日常の出来事や世間の常識をちょっとだけ視点をずらして見ることで、
意外にうまくいってしまうという展開は、今作でも活きている。
「夢は必ず叶う!」と言い切る主人公の無鉄砲でやたら熱い生き様に仲間がついていく辺りがツボだった。
 
近年は、空前のゆるキャラブームである。
これをスーツアクターと呼んでいいのか知らないが、
その数、実に1,699体(ゆるキャラグランプリ2014年大会エントリー数)。
なぜ、これほどのブームになっているのか?
青木貞茂氏の著作「キャラクター・パワー ゆるキャラから国家ブランディングまで」によれば、
「人間関係が稀薄な現代、友人や家族の代替物として、キャラクターが癒やしの存在になっている。
何か不完全で劣っている存在をみることで、人は、特別な心地よさや親密さを感じる。
日本人は、古代から動物、植物、山、川などに霊魂が宿っていると考えるアニミズムをもっていて、
なんでもかんでもキャラクター化することに抵抗感がない。」など…。
個人的には全く興味はないが、初めて実物の「ひこにゃん」を見たときの印象は、
「これは、確かにカワイイ〜」だった(笑)。
ちなみに「ゆるキャラ」のネーミングは、「マイブーム」という造語を作ったみうらじゅんによるもの。
 
映画のクライマックスは、劇中劇「ラストブレイド」で唐沢扮する忍者が100人斬りに挑むというもの。
実際にスタントなしで演じたそうだが、一つ間違えれば大怪我しそうな壮絶なシーンに息を飲む。
 
たとえ注目されてなくとも、自分の使命を全力でやり抜くことは誇っていい。
そんな余韻が残るなかなかの秀作であった。
 
 
 
DATA
日本映画/2014年/124分/
監督(武正晴)/製作(密山根成ほか)/脚本(水野敬也、李鳳宇)/
音楽(李東峻)/主題歌(吉川晃司)/
出演(唐沢寿明、福士蒼汰、黒谷友香、寺島進、和久井映見、松方弘樹、小出恵介)/