「ハウルの動く城」
−HOWL’S MOVING CASTLE−
 
 
 
またまたスゴイ作品が誕生した。
「おばあさん」が主人公なんてどうなんだろう?と心配していたが、まさに杞憂。
さすが宮崎監督、人間の魅力を描くのが実にうまい。
 
全く個人的なことだが、ボクは冒頭から主人公ソフィー(倍賞千恵子)と義母Kさんが重なって、泣けてしまった。
昨年亡くなったKさんは、ボクの中ではどこか倍賞千恵子と重なる部分をもっていた。
声の波長も似ているので、ソフィーの声はKさんの声にも聞こえた。
それに、ソフィーのキャラクターもKさんとよく似ていた。
生前Kさんは、誰とでもすぐ友達になれる人、そして人前では弱音を絶対吐かない気丈な人だった。
そんなKさんとソフィーの共通点から、ボクは始めからソフィーを身近に感じて、ググッと引き込まれてしまった。
 
主人公が老人であったり、荒地の魔女(美輪明宏)が魔法を解かれて痴呆になったり、
現代日本の高齢化社会を反映している物語だが、
真のテーマは、決して終わることのない「戦争」なのだろうと思った。
憎めない火の悪魔カルシファー(我修院達也)や「ひん!」としか鳴かない犬ヒン(原田大二郎)、
変身すると謎のオヤジになる少年マルクル(神木隆之介)などユニークなキャラクターで大いに笑えるが、
根底には常に深い悲しみが感じられる。
その辺のバランス感覚は、ホントに絶妙である。
「美人じゃないもん」と言っていたソフィーがだんだんキレイになっていって、
クライマックスではすっかり「ナウシカ」になってしまうのも、個人的にはOKだった。
声だと、少し前に見たウォン・カーウァイ監督の「2046」では全然印象のよくなかった木村拓哉が、
今回のハウルの声では、とてもよかった。
倍賞千恵子さんも老若を演じ分け、特に宮崎監督のヒロインに共通する凛とした台詞回しも
しっかり踏襲されていてとてもよかった。
 
ラストでソフィーが荒地の魔女から「心臓」を返してもらうワンシーンがある。
「お前のしたことは悪い!」「盗んだ物は返すべき!」とは、ソフィーは言わない。
それでは「戦争」はなくならないという1つのメッセージともとれる場面である。
「愛」という言葉を使わずに「愛」を語る。
「反戦」という言葉を使わずに「戦争反対」を訴える。
そういうやり方の必要性を宮崎監督は言いたかったのかなと思った。
 
冒頭に書いたが、ボクは個人的な感慨も交えて本作を見て感動したのだが、
考えてみると、登場人物に自分の身近な人や親しい人を投影してしまうというのは、
それだけ人物描写が優れているということかもしれない。
前作「千と千尋と神隠し」で世界的な成功を収めたあとだが、
今までの宮崎作品を全部生かしたような秀作に仕上がっていると思う。
そして、その真ん中にあるスピリットは、やはり感動モノである。
 
 
 
DATA
日本映画/2004年/脚本・監督(宮崎駿)/プロデューサー(鈴木敏夫)/
原作(ダイアナ・ウィン・ジョーンズ)/音楽(久石譲)/
声(倍賞千恵子、木村拓哉、美輪明宏、我修院達也、神木隆之介、原田大二郎)/