「初恋のきた道」
−我的父親母親−
 
 
中国。というとまず、万里の長城が思い浮かぶ。
それから、墨絵のような桂林、海のような黄河。
ニュースでよく見るのは、天安門広場、近代化の象徴でもある上海の都市など。
しかし、この映画に登場するのはそのいずれでもない、とある村である。
村にたった一つしかない小さな学校。
その学校に都会から赴任してきた若い先生と村で一番美しい女性の出逢いと別れの話。
 
とてもシンプルなストーリー。
映画の中で何度も映し出される村と都会を結ぶ1本の道のように、
枝分かれのない単純で純粋な1つの物語。
派手な演出もアッと驚くようなエピソードもカタルシスもなく、
ただあるのは、四季折々の美しい風景と素朴な村の人々の暮らしと、
主人公ふたりの「初恋」だけである。
ただそれだけ。
ただそれだけなのに、涙が出てくる。
 
ふと、疑問に思う。
もしかしたら、これは架空の話なのだろうか?
それとも過去にはこんな場所があったのだろうか?
今も世界のどこかにあるのだろうか?
日々の生活にあふれている情報は、すべてお金と結びついているせいか、
こういう話はまるで登場しない。
 
ベルリン国際映画祭で銀熊賞を受賞した本作は、
そのシンプルなストーリーが美しい風景と詩的な音楽に支えられ、
素朴で自然な一大叙情詩に仕上がっている。
人間として本当に大切なものは何か、ときには考えてみたくさせる映画である。
 
 
DATA
米中合作映画/2000年/監督(チャン・イーモウ)/脚本(パオ・シー)
主演(チャン・ツッイー)/音楽(サン・パオ)/撮影(ホウ・ヨン)