「至福のとき」
−幸福時光−
 
 
チャン・イーモウ監督の新作は、またしても魅力満載の感動ストーリー。
作品ごとに新鮮なチャレンジがあり、どの作品にも人間に対する思いやりと深い洞察があって飽きさせない。
「至福のとき」はズバリ、「5分見ればラストまで見続けてしまう」と監督も言うとおり、
荒唐無稽な展開に思わずガハハ!と大笑いしながら、最後にはボロボロ泣いちゃう作品。
 
物語の舞台は、現代の中国・東北地方の都市、大連。
以前は、石炭や鉄資源の国営工場で栄えた町も、今は、民営化やリストラなどにより、
失業や貧富の差や離婚などが問題になっている。
こうした時代の激しい変化に翻弄される人々がこの映画の主人公たちである。
仕事もなくただ当たり前の生活さえできない彼らの隣には、
外国資本で豊かに変貌してゆく「勝ち組」の生活がある。
まるで今の日本のようなシチュエーションを背景に、
いかにもお人好しで女性にもてず仕事もない甲斐性なしの中年太りオヤジ=チャオ(チャオ・ベンシャン)と、
絵に描いたような薄幸の美少女=ウー(ドン・ジエ)との不思議で心温まる物語に笑わされて泣かされる。
 
「金になるのか、ならないのか」
今の地球は、先進国の経済軸を中心に回っているかのようだ。
そんな中、なるようになる人もいれば、なんともならない人がいる。
人より先であることが重要で、遅れをとっては何の意味も失う。
だから、「ウサギとカメ」のお話のように走ったら途中で休むのではなく、ずっとずっと走り続けるわけである。
映画の主人公たちは、経済優先の世界が抱えている影の中で苦しみあえいでいる人たちである。
結局、どうにもならない最後を迎えた彼らは、ただただ希望を彼女に託す形で幕を閉じる。
「希望を失わなければ、いつか必ず夢はかなう…」
よくある台詞にしても、このチャオの手紙が強く胸を打ち感動を呼ぶ。
至福のときは、本物のお金ではなく、ニセ物のお金で手に入るという落としどころもグ−だ!
 
 
DATA
中国映画/2002年/監督(チャン・イーモウ)/脚本(グイズ)
主演(チャオ・ベンシャン、ドン・ジエ)/音楽(サン・パオ)/撮影(ホウ・ヨン)