「ハッピーフライト」
−Happy Flight−
 
 
 
矢口史靖(しのぶ)監督は、劇場版映画2作目の「ウォーターボーイズ」(01)で大ブレイクし、
つづく「スウィングガールズ」(04)で人気を不動のものにした感がある。
登場人物がわりと多く、みんなで何かを作り上げる学園祭的な雰囲気の作風、
というのが個人的な印象である。
男のシンクロナイズドも女子高生のビッグ・バンドもとても新鮮な題材だったが、
それらに比べると、「飛行機」はあまりインパクトがないような気もしていたが…。
 
予告編をみた時点では、80年代に流行したTVドラマ「スチュアーデス物語」のようなものかなと思っていたが、
実際は、想像していたよりもずっと奥行きのある内容で、結構、見応えがあった。
最も興味深かったのは、ひとつの飛行機を飛ばすのに、
これほど多くの人々が関わっていたのかということで、驚きであり発見でもあった。
矢口監督は約2年をかけて、航空業界で働く100人以上のプロフェッショナルに取材したそうだが、
機長、副操縦士にはじまって、機内サービスを担うキャビンアテンダント(CA)がいて、
地上には、カウンターやゲートでの接客をするグランドスタッフや整備士、
飛行機の航路や飛行状況などを監視するオペレーション・コントロール・センター、
管制官、さらには飛行機に鳥がぶつからないようにするバードコントロールなんて仕事もある。
ここにさまざまな個性と事情を抱えた乗客が加わり、
実に広がりのある面白可笑しい群像劇として物語は進んでいく。
 
撮影には、ANAの協力で本物のボーイング747-400が使われ、
機長への昇進がかかった鈴木副操縦士(田辺誠一)の操縦により、
羽田から離陸してホノルルへと飛び立っていく。
その機内では、鈴木副操縦士からの機内向けアナウンスが別の無線に流れてしまったり、
お客から注文された週刊誌と絵本を新人のCA(綾瀬はるか)が間違えてしまったり、
次から次へといろんな騒動が起こって息つく暇もない。
どれもありそうな話ではあるが、よくこれだけの数のエピソードを集め、うまくまとめたものだと感心してしまう。
 
1903年、ライト兄弟が動力飛行機の飛行に成功してから100余年。
飛行機というと、FMラジオの深夜番組「ジェットストリーム」を思い出す。
実際に乗ると騒音やら窮屈さやらもあるが、
大空を飛んで悠々と海を越えてゆけるということは、
やはり、羽のない人間にとっては途方もない夢でありロマンであり続けるだろう。
それにしても、空を飛ぶ恐怖というのも、なかなかゼロにはならないものだ。
劇中の台詞に、「400年間毎日飛行機に乗っても安全です」というのがあったが、
そうは云われても、着陸の瞬間、こっそり神様にお祈りしてる人も少なくないだろう。
そんなちょっと緊張感のある閉ざされた空間の中で、
手に汗握るドキドキシーンとユーモアに笑えるシーンが折り重なりながら、
およそ2時間のフライトをたっぷり楽しめる映画である。
音楽にこだわりのある矢口監督がテーマ曲に選んだフランク・シナトラの「Come fly with me」もよかった!
 
 
 
TOHO Cinemas Ebina
 
 
DATA
日本映画/2008年/103分/監督・脚本(矢口史靖)/
製作(亀山千広)/エグゼクティブプロデューサー(桝井省志)/音楽(ミッキー吉野)/
出演(田辺誠一、時任三郎、綾瀬はるか、吹石一恵、田畑智子、寺島しのぶ、笹野高史)