「グレーテスト・ショーマン」
-The GREATEST SHOWMAN-


映画をみてから、3ヶ月が過ぎてしまった。
とても感動したのですぐ感想を書きたかったのに…。

時々、過去を振り返る。
大事なことくらい覚えているつもりでいても、意外に忘れている。
古い写真や自分の言葉を読み返していて、ずいぶん印象が変わっていてハッとしたり、
「過去の自分」に励まされることもある。
その当時、最大限の努力をしていたことを思い出すことで新たな意欲が湧いてくる。
苦悩から逃げたり、自分の欠点に目を背けたりすることなく精一杯やっていたことに励まされる。
その時々の置かれた状況でやるべきこともやりたいことも変わっていく。
だからこそ、今がどうであるか、日々、考え続ける必要があるのだろう。
過去は振り返るだけで、生きるのは今だから。
今、この瞬間を全力で生き抜く、それだけだ。

さて、実在した興行師P・T・バーナムを描いた「グレーテスト・ショーマン」もまさにそういうことを描いている。
不遇の時期においても夢を抱き、苦難に遭っても躊躇せず挑み続け、力の限り生きる男の話だ。
彼を支える妻、彼を勇気づける子供たち、そして、仲間たちとの関係が大きな見所になっている。
バーナムはサーカスを設立したことで知られるが、
彼が招き入れたのは、様々な不遇を背負った奇異な人々だった。
小人、ヒゲの生えた女性、大男など様々。
珍しもの見たさで人気を博す反面、彼らを見世物にすることに反発する常識人も多かった。
しかし、バーナムは怯まなかった。
なぜなら、当の本人たちが、日の当たる場所へ出ることを望んだからだった。
障害者や病人をかわいそうな人として哀れみ、庇護すべき対象として扱うことで、
結果的に本人らの自由を束縛してしまったり、そもそもそうなっている事実に気付いてないことも多い。
健常者と同じことはできないとしても、彼らにもできること、彼らにしかできないことで活躍し、認められたいのだ。
実在のバーナムが善人だったかわからないが、ヒュー・ジャックマンが演じたことで信頼のおけるヒューマニストに見える。
奇異な人を集めて世間の注目を浴び、興行的に成功した成り上がり者だったとしても、
苦難に立ち向かい、一度きりの人生をかけて事を成す懸命な生き様に胸を打つ。

先月、自民党の杉田代議士が「LGBTカップルは生産性がない」と雑誌取材で発言し、物議をかもした。
さすがに世論も彼女には批判的だったと思うが、この世界には役に立つ人と立たない人がいるのではなく、
誰もがその人なりに役立ち得る存在だというのが今作のメッセージである。
そのことを最も象徴的に伝えるのが、映画本編が終わったあとに流れる主題歌「THIS IS ME」の練習風景だ。
ワークショップ・セッションの様子をたまたま撮影していた手持ちカメラの映像なのだが、
メインボーカルのキセラ・セトル(劇中で髭を生やした女性を演じ、この歌を歌う)は、
大きな仕事を前に緊張した面持ちで尻込みしているのが伝わってくる。
練習ってこともあるのだろうけど、画面の端で歌っている。
しかし、ある瞬間からガラッと変化する。
コーラス隊の一人、紫のパーカーを着た男性が彼女を励ますかのように歌ってから変わったように僕には見えた。
♪言葉の刃が傷つけるなら 洪水を起こして溺れさせる
勇気がある、傷もある、ありのままでいく
という歌詞のように、彼女は力強く歌い始め、それが瞬く間に全員に伝わっていく様子が感動的だ。
ピアニストが激しく鍵盤を叩き、ヒュー・ジャックマンも立ち上がって踊り出す。
彼女は泣きそうな表情で心を込めて、歌い上げる!

蛇足だが、アニメ映画「シング」(16)で引っ込み思案だったゾウのミーナが「Don't You Worry 'Bout A Thing」を熱唱するシーンも
これに似て感動的だった、というか、映画自体の持ち味が今作とよく似ていた。
どちらもとても素晴らしい作品で、大好きになった。


DATA
米国映画/2018年/105分/カラー/
監督(マイケル・グレイシー)/製作(ローレンス・マークほか)/脚本(ジェニー・ビックス、ビル・コンドン)/
原案(ジェニー・ビックス)/音楽(ベンジ・パセック、ジャスティン・ポールほか)/
出演(ヒュー・ジャックマン、ザック・エフロン、ミシェル・ウィリアムズ、レベッカ・ファーガソン)/字幕(石田泰子)
 

KINGS MAN