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「グレン・ミラー物語」
−The Glenn Miller Story−
好きな映画を繰り返し見て、見るたびに新たな発見があって面白いという人がいる。
それもすばらしい鑑賞方法だと思いつつ、僕の場合は大抵1回しか見ない。
理由はいくつかあるが、一番大きな理由は時間的なものである。
もし、何度も見る時間があったら、見たことのない映画を見たいと思う。
一度は見てみたいと思っている映画がすでに見切れないほどあるし、
たぶん、この先もどんどん増えていくから、毎日1本ずつ見てもとても間に合わない…。
ただ何事にも例外はあって、ごく稀に繰り返し見ている作品がある。
「グレン・ミラー物語」もその1つで、今回が3回目。
といっても、2回目に見たのが、かれこれ10年以上前になるのだが…。
グレン・ミラー(1904−1944)は、1930年代、ニューヨークで生まれたスウィング時代に活躍した人。
もともとトロンボーン奏者だったが、「自分の音」を求めて編曲にのめり込んでいく。
曲名は知らなくても誰もが聞き覚えのある名曲がずらっとある。
「ムーンライト・セレナーデ」や「イン・ザ・ムード」は「スウィング・ガールズ」(04)でも演奏され、
改めて曲のよさを思い知る、というより、今聴くと却って新鮮で、本当にすばらしい音楽だと思う。
物語は、若きグレン・ミラー(ジェームス・スチュアート)がお金を工面するために、
質屋通いをしているシーンから始まる。
気さくな質屋の店主とのやりとりから、グレンの善良な人柄が伝わってくるが、
この辺は、「アメリカの良心」ともいわれたジェームス・スチュアートの持ち味が生きている。
「いつかは質屋に来なくていいようになれよ!」と励まされるグレンだが、
この貧しく困難な時期が意外と長く続いていく。
音楽漬けの日々ではあるが、ある日、突如、大学時代のクラスメートに電話をかけたりもする。
2年間音信不通だった彼女に「僕の彼女」と呼びかけ、突然、会いに行ってしまうのだ!
そして、去年の分の誕生日プレゼントだといって贈る「真珠の首飾り」、それがのちに名曲となって蘇る。
実は彼女にはすでにエドという堅実な婚約者がいて、破天荒なグレンに呆れかえっているのだが、
それが、将来の伴侶となるヘレン(ジューン・アリスン)である。
一見お嬢様風でありながら、ときに思い切った行動をみせるヘレンは、
夢を諦めかけるグレンを励まし、支援し、ついにグレン・ミラー楽団結成へと導いていくのだ。
この映画は、グレンとヘレンの(名前が似ているなぁ)愛情物語であり、
またどのようにして名曲の数々が誕生したのかをつづる伝記映画であり、
そして、優れた音楽映画でもある。
ダンスホールで演奏される「ムーンライト・セレナーデ」や空軍の式典で演奏される「セントルイス・ブルース」、
そしてラスト、ラジオから流れる「茶色の小瓶」などなど、どの演奏シーンも印象的だ。
映画には、サッチモことルイ・アームストロング(tp)やジーン・クルーパー(ds)、
フランセス・ラングフォード(vo)などそうそうたるメンバーが特別出演していて、
その演奏や歌を聴けるところも見所である。
この映画をなぜ、繰り返しみたくなるのか、ふと考えてみた。
この映画の主題は何かというと、「夢をあきらめない」ということである。
自分がトロンボーンを吹かなくてもいいから、「自分の音を作りたい」。
そう決心したグレンは、演奏による収入を減らしながら、編曲の勉強に専念するようになる。
やがて夢は叶い、半世紀を遙かに超えた現在でも、
グレン・ミラー・サウンドは生き続け、多くの人に愛され続けている。
やはり人生はすばらしいなと、この映画をみると思えてくるのである。
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DATA
米国映画/1953年/113分/監督(アンソニー・マン)/製作(アーロン・ローゼンバーグ)/
脚本(バレンタイン・ゼイビス、オスカー・ブロッドニー)/音楽(グレン・ミラー)/
出演(ジェームス・スチュアート、ジューン・アリスン、ヘンリー・モーガン、チャールズ・ドレイク)
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