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「舟を編む」
1つの辞書を作るのに20年もかけたり、数万の言葉を掲載するために百万以上の言葉を採集する。
恐ろしく地味で気が遠くなるほど単調な作業が延々と続く辞書づくりの世界を
愛情たっぷりに書き上げた三浦しをんさんのベストセラー(本屋大賞)が原作。
辞書とは、言葉の大海を渡る一艘の舟である。
とても身近でありながら、全く知られてない辞書づくりの世界に着目した三浦しをんはスゴイ!
言葉の世界の話なので、本との相性はいいが、さて、映像化したらどうなるか?
石井裕也監督は「川の底からこんにちは」(09)がとても面白かったので、
大いに期待して見に行った…。
超個性派の主人公・馬締光也に扮する松田龍平をはじめ、
香具矢(宮アあおい)、監修の松本(加藤剛)、ベテラン編集者の荒木(小林薫)とみんなイメージぴったり!
唯一の誤算といえば、お調子者の西岡(オダギリジョー)が原作より魅力的だったことか?(笑)
早雲荘や「大渡海」編集室の雰囲気もよくできていたし、何の違和感もなく楽しめた。
ただ、物足りなさが全くなかったわけでもなかった。
たとえば、膨大な言葉と格闘する場面や馬締と香具矢が少しずつ親密になっていく過程は、
だいぶ端折られていたような気がした。
それが、映画のせいなのか、それとも先に原作を読んでいたせいか、よくわからない。
以前、映画「世界の中心で、愛をさけぶ」(04)を見てから片山恭一の原作を読んだら、
「??」ということもあったから、もしかすると、先に見たり読んだりした方の印象が強く残り、
2番手に違和感や物足りなさを感じたりするのかもしれない。
今作について言えば、原作でイメージしていた世界観がキッチリと映像化されていて、
十分に楽しめ、申し分ない仕上がりだったと思う。
原作を読んだときも映画を見たときにも感じたのは、「働きがい」。
例えば、iPS細胞のような世界をリードする仕事は誰もが認め、たくさんの予算がついたりもするけど、
辞書づくりのような地味で注目もされないような仕事にも魅力があるんだなってことを再認識できた。
つまりは、どんな仕事にも社会的意義があり、一生を捧げるに値する「働きがい」があるということである。
仕事がマンネリ化している人やこれから社会に出て行く若者たちにも大いに励みになるに違いない。
それが「舟を編む」という作品の大きな魅力でもある。
かくいう自分も、「本当に社会の役に立ててるのかな?」というモヤモヤが吹き飛ばされた気がした。
湘南109
DATA
日本映画/2013年/133分/監督(石井裕也)/
製作主任(橋立聖史)/脚本(渡辺謙作)/原作(三浦しをん)/音楽(渡邊崇)/
出演(松田龍平、宮アあおい、オダギリジョー、八千草薫、小林薫、加藤剛)
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