「アナと雪の女王」
-FROZEN-
 
 
 
ディズニー設立90周年記念作品(ディズニー長編アニメ53作品目)。
宮崎駿監督の「風立ちぬ」もノミネートされていた第86回米アカデミー賞で、
長編アニメーション賞と主題歌賞を受賞した他、数々の映画賞を受賞している。
興行収入面でもディズニー・アニメ史上no.1を記録し、
日本においても公開後5日で観客動員数100万人を突破する勢いである。
何がそこまで人々を魅了し、大ヒットにつながっているのか。
 
まずもって映像の美しさに目を奪われる。
舞台となる「アレンデール」は、氷雪に閉ざされた北欧風の王国。
雪や氷の質感を正確に描写するために、徹底的なリサーチが行われている。
専門家にも協力を仰ぎ、自然界には全く同じ形状の雪の結晶が存在しないことから、
形の異なる2000種類もの雪片を作ったという。
魔法によって氷の宮殿が建ち上がるシーンでは、1コマに平均30時間もかけるなど、
気が遠くなるような労力が費やされている。
 
この作品は、ディズニー・アニメ史上初のダブル・ヒロインということも話題になっている。
特殊な能力(魔法)をもった姉エルサ(イディナ・メンゼル)と無邪気な妹アナ(クリステン・ベル)。
とても仲のよい姉妹だったが、幼少時の事故で、エルサは誤ってアナに怪我をさせてしまう。
自分の魔法が人を傷つけてしまうことに恐れを抱いたエルサは、
以来、城に閉じこもり、感情を抑えて生きることとなる。
やがて転機が訪れ、エルサが王国を離れ、自由を獲得し、
抑制していた力で氷の宮殿を建てるシーンが圧巻である。
おそらく映画史に残るだろう主題歌「Let it go」がエルサ自身によって力強く歌われ、
過去を封印し、自らの生きる道を自らの力で開拓していくシーンに心を揺さぶられる。
 
映像的にも音楽的にも見所の多い作品だが、とりわけ興味をひくのは、
「恐れ」対「愛」という主題である。
世の中には怖い物知らずな人や勇猛な人もいるが、
大抵の人は大小様々な事柄に不安や恐怖心を抱きつつ何とかやりくりして生きているに違いない。
困難に挑戦すればするほど、恐怖に身が縮む機会も増えてくる。
できる限り矢面に立たないよう要領よく立ち回りたいというのが万人の本心かもしれない。
しかし、傷つくことを恐れるあまり、縮こまって生きていて本当の幸せを掴めるだろうか?
松下幸之助が「動物園の動物は喜んでいるだろうか?」ということを書いている。
「食べる不安も、敵に襲われる心配もない保護された檻の中にいる動物たちの心はわからないが、
果てしない原野を駆けめぐっているときの幸せを、時に心に浮かべているのではないか」と。
「恐れ」との向き合い方には、個々人の人生観が色濃く投影されることだろう。
エルサの選んだ道に、多くの人が魅了されたのだと思う。

今作でのクライマックスでは、「真実の愛」に対する「偽物の愛」が描かれる。
恐怖に立ち向かった主人公らの献身的な行動が
希望に満ちた爽快な結末をもたらしてくれて、ディズニーらしいと思うのだが、
ふと、ロングラン上映を続けている「永遠の0」(13)に重ねてしまった。
家族のために生きて帰ること、国のために命を捨てること。
どちらも真実の愛に違いないが、献身的(自己犠牲的)なのは後者である。
利己心からの脱却が、恐怖に取り囲まれた「今」を切り拓くキーワードなのだろうか…。
 
 
 
DATA
アメリカ映画/2013年/108分(短編6分含む)/スコープサイズ/ドルビーサラウンド7.1/
監督(クリス・バック、ジェニファー・リー)/製作(ピーター・デル・ヴェッチョ)/
脚本(ジェニファー・リー)/音楽(クリストフ・ベック)/
声優(クリステン・ベル、イディナ・メンゼル、ジョナサン・グロフ、ジョシュ・ギャッド)/