「愛しのフリーダ」
-Good Ol' Freda-
 
 
 
1962年10月5日、「Love Me Do」で英国デビューしたビートルズは、
数々の名曲を残して、1970年4月10日、ポール・マッカートニーの脱退宣言で事実上の解散となる。
この期間、彼らの秘書を務めたフリーダ・ケリーが、
解散後初めて語ったドキュメンタリー映画が「愛しのフリーダ」である。
ビートルズの一ファンでしかなかった17歳の少女が彼らと共に世界を制覇し、
世界で最も多忙なファンクラブ運営に費やした11年間の貴重なアーカイブである。
 
「今さら、ビートルズでもないかな?」
という気持ちもなくはなかったが、見始めたらたちまちチャーミングなフリーダに魅了されてしまった。
70近いおばあちゃんにである!
いたずらっぽく微笑むフリーダは17の頃のままにみえる。
「メンバーの誰かとデートしたの?」とインタビュアーに訊かれると、
「パス!聞いたら衝撃で、あなたの頭が禿げちゃうわよ!」とクスクス笑ってる。
機知に富んだ彼女の言葉は、愛に満ち溢れている。
メンバーからは妹のように愛され、
メンバーの家族からもまるで実の娘のように大事にされていたというのも納得である。
 
フリーダ自身も魅力的だが、彼女が語るビートルズもさすが魅力満載である!
メンバーの最も近くにいて、彼らを一番よく知る彼女の人物評も興味深い。
「ポールはハンサムで賢い。彼が怒った顔を見たことがない。
ジョージはとても思慮深く、物静か。
リンゴはいつも歌ったり踊ったりハッピーな人。
ジョンはとても己がある人で、厳しい人だと思っている人もいるけど、
とてもソフトな部分もある人だった。」
ふと、最近読んだ「この日のビートルズ」(著者:上林格)の結びの一文を思い出した。
「時々だが、『ビートルズの四人の中で誰が一番好きですか?』と聞かれることがある。
『四人一緒がいいんだ』。この返事、多分、ビートルズが好きになってから、ずっと変わっていない。」
きっと、フリーダも同じ気持ちだったんじゃないかなと思う。
 
彼女がビートルズの秘書だったことは、周囲の人もほとんど知らないという。
なぜなら、彼女自身が口外してこなかったから。
本や映画化の話もすべて断ってきたという。
「誰だってお金が好きだし、今より裕福になりたい。
でもキリがないでしょ。わずかなお金で魂を売る気はないわ。」
そんなことも言っているフリーダなのだが、
今作の出演を受け入れた一番の理由は、最愛の息子の死だったようだ。
ビートルズのことを何も話してなかったことを後悔し、
娘に孫ができたのを機に、家族への記録として撮影が始まったという。
 
僕は特別ビートルズのファンというわけではないが、それでも十分に楽しめる作品である。
たとえビートルマニアであっても、きっと新しい発見があるだろうし、
何よりフリーダのおしゃべりを聞いているだけで、
楽しいひとときが過ごせるに違いない。
ドキュメンタリー作品は、ドラマ性に薄く退屈してしまうこともあるのだが、
ライアン監督はドキュメンタリーを得意としているだけあって、
テンポが小気味よく、一瞬たりとも退屈することはなかった。
もしもビートルズがこの世に存在しなかったら、
きっと今の音楽界は違ったものになっていたのだろう。
個性もまるで違う才能豊かな4人がおよそ10年間も一緒に活動を続けられたことは、
ちょっとした奇跡なのかもしれない。
そんな風に思えるこれは真実ゆえに感慨深い作品である。
    
渋谷ヒューマントラストシネマ
 
 
DATA
米国・英国映画/2013年/86分/ビスタサイズ/5.1ch
監督・製作(ライアン・ホワイト)/製作(キャシー・マッケイブ)/
脚本(ジェシカ・ローソン、ライアン・ホワイト)/
出演(フリーダ・ケリー、アンジー・マッカートニー、リンゴ・スター)/字幕(寺尾次郎)