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「あなたの初恋探します」
−First love agency−
さりげなく、とてもよくできた作品。
ラブ・コメなので随所で笑えるし、映像もテンポもよく、鑑賞後の爽快感もスカッと爽やかだ。
韓流の底力を感じる秀作で、とても気に入ってしまった。
主人公のソ・ジウ(イム・スジョン)は、ミュージカルの舞台監督を務める33歳のキャリア・ウーマン。
男勝りにバリバリ働いてるが、抜け目なく目を付けてる男もいるもんで、仕事の合間にプロボーズされる。
すらっと背が高く、ハンサムで性格もよさそうなパイロットからの申し出であるが、
彼女は、にべもなく断ってしまう。
今は結婚より仕事の方が面白いし、やりがいもあって日々忙しいから、だろうか。
それとも、今も忘れられない「初恋の人」のせいだろうか…。
一方の主人公は、旅行会社で働くハン・ギジュン(コン・ユ)。
劇場に来ていたオバ様方の目当ては、どうやらこの俳優のようで、
「やっぱり、カッコいいわねぇ」とため息を漏らしていた。
それはさておき、この青年のキャラがなかなかユニークで面白い。
旅行会社に勤めていながら自ら旅行へ行くことはなく、お客さんとの電話応対では、
旅行を斡旋するよりも、どこそこは治安が悪いとか空気が汚染されてるとか律儀に話してしまい、
まるで営業にならず、上司には厳しく叱責される。
そんな彼が仕事に愛想を尽かし、ひょんなことから「初恋探し株式会社」を起業してしまう。
さて、パイロットからのプロポーズを断ったのを知ったジウの父親(チョン・ホジン)は、
前田吟にちょい似の小うるさいお父さん。
奥さんがいないのか、二人の娘の将来を案じて、つい小言を挟みがち。
こうなれば初恋の人を探して結婚させようってことで、無理矢理「初恋探し株式会社」へ娘を連れていく。
ジウにとっては全く余計なお世話でしかない会社の起業家ギジュンは、
見た目も冴えない潔癖症で融通の利かないダメダメ男でしかない。
その二人が探すのは、彼女が10年前に旅先のインド・ジョドプールで出会った「キム・ジョンウク」という青年。
何度も追想される旅先での甘美なシーンに登場するいかにもカッコイイ男、キム・ジョンウクを
ダメダメなギジュン役とともにコン・ユが二役で演じ分けているところも見所である。
なぜ、ジウが結婚に踏み切れなかったのか。
物語は、意外な展開をみせる。
やがて、意外などではなく、むしろ、そういうものかもしれないと気付かされて結びとなる。
女心はそう単純ではない、というか、人の心はそう浅いものではないのだ。
本作では、いわゆるラストシーンにつづき、おまけのようなエピソードが意味深に続く。
「初恋の人」に対して、「運命の人」という意味だろうか?
ずっとこの二人を見ていたい、というような余韻が残った。
主演の二人は、韓国ではトップ・クラスの人気だというのも納得のオーラを発していた。
また、これが劇場映画第一作となる女性監督のチャン・ユジュンは、
本作の原作となるミュージカル「キム・ジョンウクを探して」などの演出家として、
演劇界では有名な実力派らしい。
主人公のジウにもギジュンにも、脇を固める魅力的で可笑しい登場人物誰にでも
感情移入してしまえるのは、監督・脚本の力量に違いない。
文化は楽々と国境を越えていく、と久々に思い出せてよかった。
DATA
韓国映画/2010年/112分/監督・脚本(チョン・ユジョン)/
撮影(イ・ヒョンドク)/編集(キム・ソンミン)/美術(キム・シヨン)/
出演(イム・スジョン、コン・ユ、チョン・ホジン、チョン・スギョン)/字幕(根本理恵)
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