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「ドリーマーズ」
−THE DREAMERS−
2日間の試験が終わり、久しぶりに軽くなった気分で「誰も知らない」を見よう、
と有楽町シネカノンへ行くと、なんと長蛇の列。
3本先まで満席ということなのでキッパリ諦めて、
銀座をブラブラしながら、シネスイッチまで歩いていった。
ちなみに「銀ブラ」とは、「銀座をブラブラ歩く」が語源ではなく、
銀座パウリスタ(カフェ)にブラジル珈琲を飲みに行くことなのだそうだ。
1968年、パリ。
美しい双子の姉弟イザベル(エヴァ・グリーン)とテオ(ルイ・ガレル)、
アメリカからパリに来た留学生マーシュ(マイケル・ピット)の何ともつかみどころのない物語。
いわく、ヌーヴェル・ヴァーグ(新しい波)である。
私はこのヌーヴェル・ヴァーグの世界観がどうにもピンとこない。
以前、ジャン=リュック・ゴダールの名作「勝手にしやがれ」を見たときも、
途中で生あくびがが立て続けに出て、結局、居眠りしてしまった。
お金をかけず、ストーリー重視の映画に対抗してできた、
50年代後半から60年代の「新しい作風」なのだそうだが…。
よくはわからなかったものの、雰囲気はなかなかの映画だった。
なかでもベルトルッチ監督が見出し今作が映画デビューとなったエヴァ・グリーンの妖艶な美しさは特筆もの。
かつて同監督が「魅せられて」で発掘したミューズ、
リブ・タイラーによく似ているのは、やはり監督の好みか?
1968年、パリではベトナム戦争に端を発した5月革命が起きていた。
この革命の舞台となったのが、シネマテーク・フランセーズ(映画館)。
ここで上映された映画をみて多くのヌーヴェル・ヴァーグの作家が誕生したのだが、
その映画館代表のアンリ・ラングロワという人が解雇されたことで暴動に発展してゆく…。
ベルトルッチ監督がこの映画に託したものは、何か?
「68年の若者がもっていた理想主義とユートピアのスピリットが、今は失われてしまった。
当時のロマンティシズムは、何ら恥じることのない素晴らしいものだと思い出してほしい。」
と監督は語っている。
主人公らの行動は奇異な面もあるが、そういう時代、そういう時期があるのも確か。
イザベルの台詞が、印象に残る。
「愛なんて存在しない。あるのは愛の証だけよ。」
この言葉が、この映画を象徴しているようにも思える。
つかみどころがなくても確かに存る、そういうものもあるのだ。
映画は、ヌーヴェル・ヴァーグへのオマージュということで、
20〜60年代にかけての映画、例えばチャップリンの「街の灯」やゴダールの「勝手にしやがれ」等が挿入され、
映画のシーンと実際のシーンが微妙に絡み合いながら結構楽しませてくれる。
見終わって、再び銀座の街に出たとき、私は不思議な感慨をもっていた。
「あっ、自分は極東に住むアジア人なんだな。」
パリの人とは、食べている物も住んでいる場所も文化も人間の形も何もかも違っているんだな、という感じ。
そんな当たり前のことを妙に確かな感覚として意識したのは、
もしかしたらこの映画を見たのが初めてかもしれない。
そう思うと、よくわからなくても、つかもどころがなくても、
それはそれなりに面白い感じである。
DATA
英伊仏映画/2003年/監督(ベルナルド・ベルトルッチ)/製作(ジェレミー・トーマス)/
原作・脚本(ギルバート・アデア)/美術(ジャン・ラバス)/
出演(マイケル・ピット、エヴァ・グリーン、ルイ・ガレル)
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