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「トンマッコルへようこそ」
−Welcome to Dongmakgol−
韓国で800万人が笑って泣いた!という話題作である。
日本ではいまひとつ話題になってないようだったが、
個人的にはとても好きなタイプの映画だった。
ときは朝鮮戦争まっただ中の1950年代である。
トンマッコルとは架空の村なのだが、「子供のように純粋」という意味のその村に、
敵対する連合軍=韓国軍、人民軍の兵士が紛れ込むところから始まる寓話である。
冒頭、激しい戦闘シーンから幕が開ける。
少し前にみた「父親たちの星条旗」に負けないほど残虐なシーンが続き、思わず顔を背けたくなる。
「えっ、こんな映画なの?」と少々驚きつつ見ていると、
そこに不思議な美少女ヨイル(カン・ヘジョン)が登場し、雰囲気は一変してファンタジーの世界に入り込む。
実は少し頭の弱いヨイルは、鉄砲を見たことがないので、鉄砲を突きつけられても恐れることがない。
争いごとのないトンマッコルでは、兵士同士が敵対していても、のんびりしたものである。
観客は、そこにユートピアを見てしまうのだが、
よくよく考えてみれば不思議なことである。
というのも、その村は昔ながらの自給自足の生活を送っていて、
決して裕福でもなく、粗末な身なりで古びた家に住んでいるのだ。
人類はずっと物質的な豊かさを求めて、植民地を作ったり、他国に攻め込んだりという歴史を連綿と続けてきた。
にもかかわらず、そういった物の豊かさがない村に理想郷を感じてしまうのは、一体どういったことだろう?
一体、人間は、どこへ向かって進化しているのだろうか?
まるで理想郷のようなその村を見ていて、ふと「風の谷のナウシカ」や「もののけ姫」に出て来る村を思い出したのだが、
実は音楽を担当しているのが宮崎駿作品「風の谷のナウシカ」や「千と千尋の神隠し」「ハウルの動く城」
でお馴染みの久石譲だったのだ。
音楽の力は、やはり偉大である。
劇中、ある兵士が村長(チョン・ジェジン)に「どうしたらこんなに平和で争いのない村を作れるのですか?」と
尋ねるシーンがある。
村長の答えは、単純明快だった。
それは「腹いっぱい食わせることだよ」。
この映画は、「どうして戦争は繰り返されるのか?」という問に対して、
監督なりの回答なのであろう。
そのメッセージは、この村長の言葉に集約されているように思う。
しかしながら、ラストシーンは、圧巻だった。
これをハッピーエンドといってよいのかわからないが、
幾重にも立ち上る火柱の中で互いに笑みを浮かべる兵士たちの表情には、
将来への希望が感じられた。
私はそのラストシーンに、ジョージ・ロイ・ヒル監督の名作「明日に向かって撃て!」を重ね合わせ、
運命に逆らわない生き様に諦めと潔さを感じて満足していた。
有楽座
DATA
韓国映画/2005年/132分/監督・脚本(パク・クァンヒョン)/脚本(チャン・ジン、キム・ジュン)
原作(チェン・ジン)/製作総指揮(キム・ウテク、チョン・テソン)/音楽(久石譲)/
出演(シン・ハギュン、チョン・ジェヨン、カン・ヘジョン、イム・ハリョン、スティーブ・テシュラー)
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