「五線譜のラブレター」
−De−Lovely−
6歳からピアノを習い、10歳で作曲を始めたというコール・ポーターの伝記的ミュージカル映画。
ミュージカル映画は、「ストーリーに関係なく歌が入るから好きじゃない」という人は多く、
ボクもそのひとりだけど、この作品は、ハッピーな例外の1つとなった。
流れる音楽はすべてがコール・ポーター自身の作で、歌詞とストーリーは見事に融合していた。
そんなの当たり前、かというとそうでもない。
この映画のために書いたわけではない色々な年代の様々なショウのために書いた曲を、
ストーリーに合わせて再構成・アレンジする作業は、途轍もなく大変な仕事だったに違いない。
衣装も大変だったようだ。
1920〜30年代の社交界でつねに完璧な身だしなみだったポーター&リンダ夫妻を再現するために、
ポーター(ケビン・クライン)用に38着、リンダ(アシュレイ・ジャッド)用に48着を準備。
さらに他のキャスト&1200人以上のエキストラ用の衣装を用意しなければならなかったという。
結婚式でリンダが着るドレスなどは、あのジョルジオ・アルマーニの作だそうだ。
ミュージカルなので実際に歌う人が必要なのだが、
登場するミュージシャンが、本当に驚くような顔ぶれである。
ジャズ界からナタリー・コールやダイアナ・クラークがきたかと思えば、
ロック界からシェリル・クロウやエルビス・コステロ、ミック・ハックネル(シンプリーレッド)。
アラニス・モリセットやロビー・ウィリアムスといった大物スターらが次々と登場する。
いろんなジャンルの人たちだが、一様にコール・ポーターを深く敬愛し、出演をとても光栄に思っているということだった。
ちょっと驚きだったのは、主演の2人。
K・クラインは、もともと音楽の勉強をしていただけあって、ピアノも歌も抜群にうまく、
しかも本人の希望でほとんどの歌を撮影と同時に生録音している。
A・ジャッドも母と姉が現役のカントリーシンガーという血筋、だから歌えるものでもないと思うが、
「True Love」という美しい歌をとびきりキュートに歌っている。
アーウィン・ウィンクラー監督(製作)のことは、全然知らなかったが、「ロッキー」を製作し、
アカデミー作品賞を受賞した人だった。
その後、「ニューヨーク・ニューヨーク」や「ラウンド・ミッドナイト」など上質のミュージカル映画を手がけたベテラン・プロデューサー。
この作品は、「ただ事実を述べる伝記映画ではなく、それ以上の独創的なものを目指していた」
と製作のコーワン氏のコメントがプログラムにも紹介されていたが、
なるほど納得!の内容である。
大切なのは、事実ではなく、真実なのだから。
1891年インディアナ州生まれのコール・ポーターは、1964年までの生涯に約870曲の歌を作ったという。
「さよならを言うたびに、私はちょっと死んでしまう」のように、曲の美しさ以上に詩人であったといわれている。
映画は、伊達に奔放にときに自分勝手に生きるポーターを優しく支え続けるリンダの視点で描かれる。
お洒落で豪華、ほんのり甘くほろ苦い、そんな126分を愉しめる映画である。
ちなみに原題は、C・ポーターの造語「It’s De−Lovely」からとったもの。
DATA
米国・英国映画/2004年/監督(アーウィン・ウィンクラー)/脚本(ジェイ・コックス)/
製作(アーウィン・ウィンクラー、ロブ・コーワン、チャールズ・ウィンクラー)/
作詞作曲(コール・ポーター)/編曲・音楽製作(スティーヴン・エンデルマン)/
衣装(ジャンティ・イェーツ)/出演(ケビン・クライン、アシュレイ・ジャッド、ジョナサン・プライス)/
ミュージシャン(ロビー・ウィリアムス、エルヴィス・コステロ、ダイアナ・クラーク、アラニス・モリセット、ナタリー・コールほか)
シャンテ・シネ(有楽町)