「シンデレラマン」
−Cinderella Man−
 
 
 
正直、タイトルがださいなぁと思った。
「エレファントマン」とか「スパイダーマン」とかシンプルでいいけど、もうちょっと雰囲気が欲しいなと…。
全然期待せず、ただラッセル・クロウだしなぁくらいの気持ちで観に行った。
映画が始まると、「シンデレラマン」とは実在したボクサーの愛称だとわかる。
1930年代、米国が建国以来初めて経験した困難の時代と戦ったジェームズ・J・ブラドック(1906−1974)を讃え、
今再び米国と世界が直面している複雑な危機にも、
不屈の精神で立ち向かう勇気をくれる作品である。
 
新聞記事のモノクロ写真が一瞬でムービーに変わるところから始まる。
やや筋肉が落ちて痩せた感じのラッセル・クロウ(役作りのため18kg減量)が相手をKOするシーンだ。
さすがロン・ハワード監督(個人的には「スプラッシュ」が好き)、のっけからグイグイ引き込んでくる!
主人公のジム・ブラドック(ラッセル・クロウ)は、前途有望なボクサーだった。
希望に満ちた豊かな人生を送っているのだが、これも一瞬のシーンで極貧の生活に変転する。
ジムは、試合中の怪我や交通事故など不運が重なり、チャンピオンを目前にしてライセンスを失ってしまったのだ。
アメリカは、1929年から始まる大恐慌の時代に入っていた。
大統領の名前から「フーバー村」と呼ばれるホームレスの村が全米に数千カ所もでき、
動物園を廃園にしてその肉を食べたり、ゴミ集積場のゴミを漁ったり、
それでも多数の餓死者が出るほど非常に過酷な状況だったという。
 
仕事と財産を失ったジムは、最愛の妻メイ(レニー・ゼルウィガー)と3人の子供たちを養うために、
港湾での肉体労働で日銭を稼ぐが、そういった仕事も毎日あるわけではない。
やがて、電気が止められ、食事も十分に食べられず、子供が病気になってしまう。
そんな極限状態に追いつめられたジムに千載一遇のチャンスが訪れるのだが、
果たしてどうなるのか、ハラハラドキドキあり笑えるシーンありと見せ場もたっぷりある。
 
終盤はボクシング・シーンが中心になるのだが、非常に迫力あるシーンが続く。
ロン・ハワード監督がいう「単なるアクションではなく、
パーソナルなドラマをリングの上に持ち込み、観客にも一緒に体感してもらう」が堪能できる。
試合を家で待つメイや子供達、マネージャーのジョー(ポール・ジアマッティ)、
さらには観客や町中の貧しい大衆などいろいろな人の思いが丁寧に織り込まれ、
とても見応えのある試合=クライマックスである。
 
特に、印象に残ったシーンがある。
極貧の生活が続く中、全く勝ち目がない一夜限りの試合に出たジムが疲れ果てて家に戻り、
心配そうに待っていた子供たちの前にお金を出して、「バァ!」とおどけるシーン。
莫大なファイトマネーや歴史に残るような名声よりも、
愛する家族との静かな暮らしを大切にしたジムの人生観が垣間見えて、
とても微笑ましく美しいシーンである。
 
今作の映画化を強く切望したというラッセル・クロウとレニー・ゼルウィガーがとてもいい。
戦うのは家族のため。戦いが終われば、静かに家族のもとへ帰る。
あれっ、まるで「グラディエーター」だなぁ!(笑)
ロン・ハワード監督とラッセル・クロウのコンビでアカデミー賞を総なめした「ビューティフル・マインド」(2001)より、
数倍面白くて、数倍感動する作品、でした。
 
 
 
DATA
米国映画/2005年/監督・製作(ロン・ハワード)/脚本(クリフ・ホリングワース、アキヴァ・ゴールズマン)/
製作(ブライアン・イレイザー、ペニー・マーシャル)/音楽(トーマス・ニューマン)/
出演(ラッセル・クロウ、レネー・ゼルウィガー、ポール・ジアマッティ、クレイグ・ビアーコ)