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「蝶の舌」
「人が死ぬといったいどうなるの?」
8才の少年モンチョの問いに、グレゴリオ先生は言う。
「あの世に地獄などはない。人間が地獄を作るのだ」
人の生きる道について深く確かな見識をもったグレゴリオ先生の授業は、
ときに森を舞台に、自然を教科書に行われる。
ティロノリンコという南国鳥の話、ぜんまい状をした蝶の舌の話などに子供達の目が輝く。
この映画は、子供の通過儀礼(イニシエーション)を描いたよくある物語ともいえる。
その時代につきものの、例えば喧嘩、淡い恋、性的なものへの目覚めなどにまつわるエピソードが、
スペインの美しいガリシア地方の小さな村を舞台に、坦々と、丁寧に描かれてゆく。
子供時代には誰もが似たような経験をするという意味では平凡な、
それでいて人生における最も好奇心に富む時代を描いたという点では劇的な物語。
問題のクライマックス。
平凡で幸せな日常がスペイン内戦を背景に急旋回してゆく中で、
モンチョ少年とグレゴリオ先生の別れが、突如、やってくる。
「ティロノリンコ!」「蝶の舌!」
ラストにモンチョが叫ぶ言葉は、まさに先生から授かった真実の言葉。
平凡な日々の生活がどれほど美しくかけがえのない財産であったか、思い知らされ涙する。
DATA
スペイン映画/1999年/監督(ホセ・ルイス・クエルダ)/原作(マヌエル・リバス)
脚本(ラファエル・アスコナ)/主演(フェルナンド・フェルナン・ゴメス、マヌエル・ロサノ)
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