「コーラス」
−Les Choristes−
 
 
 
50年ぶりに再会するふたりの男、ピエール・モランジュ(ジャック・ペラン)とペピノ。
50年前の1949年、学校で写した1枚の集合写真を懐かしそうに眺める。
「この先生の名前なんだっけ?」
「クレマン・マチューだよ」
感慨深げなふたりは、マチュー先生が残した日記を開く。
そこはフランスの片田舎にある「池の底」という奇妙な名前の学校だった…。
 
そんな感じでオープニングからテンポよく、ぐいぐい引き込まれてしまう。
「池の底」という学校は、親がいないとか素行に問題がある子供達が寄宿生活していて、
かなり荒れた雰囲気の学校である。
その学校に、クレマン・マチュー(ジェラール・ジュニョ)という音楽教師が赴任してくる。
映画の舞台は、ほとんどこの学校の中で終始する。
 
舞台が固定されている映画といえば、A・ヒッチコックの「ロープ」「裏窓」が有名だが、
ボク個人は、A・パーカー監督の「ミッドナイト・エクスプレス」を思い出した。
「ミッドナイト…」は、麻薬密輸で捕まった主人公が言葉の通じない異国の刑務所で、
非人間的な扱いを受けるという実話をベースにした作品。
学校と牢獄という違いは大きいのだけれど、「池の底」という閉ざされた場所で、行動を抑圧された中で、
心の和平と自由をつかみ取ろうとするところに、共通したテーマが感じられる。
抑圧する強者=校長、抑圧される弱者=子供達、救世主=マチュー先生、
このトライアングルを軸にいろいろな出来事を経ながらそれぞれの関係性が変化し、
クライマックスでとても清々しい感動を迎える!
 
「コーラス」を見て、「ニュー・シネマ・パラダイス」を思い出すという人も多いようだ。
実際、製作と主役ピエール(大人)を演じているジャック・ペランは、
「ニューシネマ…」のトト役(大人)で出演していた人である。
ジャック・ペランは、「コーラス」について、次のようなコメントを書いている。
「子供時代の思い出は、後になって大きな意味を持つようになります。
無意味なことは一つもありません。
そして音楽や歌は、その頃を美しく鮮やかに蘇らせてくれます。
どうかこの映画を、あなたの子供時代と重ね合わせて思い出してください。
あの無心で一生懸命だった日々を…。」
 
主人公のピエール・モランジュ役を務めたジャン=バティスト・モニエくんは、
仏リヨンにある「サン・マルク少年少女合唱団」のソリストで、映画出演はこれが初めてである。
劇中「奇跡の歌声」といわれる彼の声は、限りなく透明で本当に美しい。
しかし、ボーイ・ソプラノは、いずれは声変わりで失われてしまう声でもある。
この作品は、「限りある声=ボーイ・ソプラノ」をモチーフに、「師弟愛」や「少年時代」「人間の生」といった
いずれも限りあるものの儚さと尊さをスリリングかつユーモアに描ききった作品ともいえる。
 
「あっ、もう終わりなんだ!」と思える映画は、本当にすばらしい。
ラストまで一気に見せて見応え十分だが、そのラストがまた奇跡的な美しさだ。
いくつもの紙ヒコーキが舞う、窓からのぞく小さな手、そして、土曜日の「お迎え」の正体…。
瞼の奥に残るエンディングの映像、きっと映画史に残る名画になると思う。
 
 
 
DATA
仏映画/2004年/製作(ジャック・ペラン、アーサー・コーン、ニコラ・モヴィルネ)/
監督・脚本・音楽(クリストフ・パラティエ)/音楽(ブリュノ・クーレ)/
出演(ジェラール・ジュニョ、ジャン=バティスト・モニエ、ジャック・ペラン、マクサンス・ペラン)/
     
cinecitta