「劇場版 再会長江」
-The Yangtze River-
中国で「母なる大河」と呼ばれる全長6300kmの長江を2年もかけて走破し、
源流に辿り着くまでを記録したドキュメンタリー映画。
というだけではまだ食指が動かなかった。
ロードムービーとかドキュメンタリー映画はどちらかというと苦手だ。
理由はよくわからないが、退屈することが多い。
他にコレという映画がなかったので物は試しで観てみたら、大正解だった。
年間100本以上観ても心底感動、感銘を受ける作品はほんの数本だけど、
今作は心に刺さる1作だった。
舞台は「長江」だが、主題は「再会」の方だ。
竹内監督は、10年前にNHKの番組「長江 天と地の大紀行」を撮っていて、
そのとき心残りだったことが、地球第三の極地と呼ばれる長江源流の「最初の一滴」を撮れなかったことだったそうだ。
そこに共感するか、そんなことにはあまり興味がないかは人それぞれだろう。
僕はどちらかというと後者だ。
僕が感動したのはそこではなかった。
巨大な国際都市「上海」に始まった旅は、「三国志」の舞台「赤壁」や長江一の絶景と言われる「長江山峡」、
世界最大の水力発電ダム「山峡ダム」や桃源郷のようなシャングリラなど中国の多様な姿を迫力ある映像で映し出す。
テンポよく編集されているせいか、全く退屈しない。
退屈しないどころか、一緒に旅をしているようなワクワクドキドキの連続だった。
竹内監督は自ら出演しながら、10年前に撮った土地や人を再訪し、
10年間という年月による中国と中国人、そして監督自身の変化をありのままに映し出す。
まるでその場にいるかのような臨場感と旅の醍醐味が凝縮されていた。
しかも、常人には真似できないレベルである。
僕も色々な旅の中で、異文化に触れ、不思議な偶然や一生忘れ得ぬ出会いがあったが、
竹内監督の旅は段違いの大冒険である。
中国の雄大な自然の息を呑むような美しさも圧巻だったが、それ以上に「人」の生き様に魅了された。
例えば、女性が治めるモソ人の村社会のしきたりに悩む甄甄さん、
棒棒(バンバン)という棒一本で家族を養ってきた蒋培清さん、
子羊と写真を撮る商売をしていたチベット族の茨姆さん。
自ら中国語を話し、どんどん入り込んでいく竹内監督の類い希な気さくな人柄、人間力が素晴らしい。
彼の目線で旅先での奇跡的な出会いを余すところなく追体験することができる。
自分の思い通りにしたいという欲望が大なり小なり人にはある。
ままならない現実にぶつかり、辿る道は2つだ。
潔く諦めるか、諦めないか。
何を諦め、何を諦めないかでその人の人生が作られていく。
理想からの引き算と、現実への足し算でその人の生き様が決まっていく。
旅先では、日々理想と現実のせめぎ合いの中でドラマが生まれる。
予期せぬ感動や奇跡に出会えることがある。
その旅路は、人生に似ている。
今作は、そんな旅の魅力を余すところなく捉え、描ききっている。
想像を遙かに超える秀逸なドキュメンタリー映画だった。
観てよかった~!

DATA
日本映画/2024年/111分/
監督(竹内亮)/ラインプロデューサー(王可可)/撮影(揚林)/
出演(竹内亮、江洪、茨姆、甄甄、揚芹会)/ナレーション(小島瑠璃子)