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「007/カジノ・ロワイヤル」
−CASINO ROYALE−
第1作「007/ドクター・ノオ」(62)から約半世紀にわたる長寿シリーズだが、
「カジノ・ロワイヤル」は、原作者イアン・フレミングが初めて書いた「007」でもある。
全シリーズを製作してきたイオン・プロダクションが小説「007」の映画化権を取得した当時(60)、
すでに「カジノ・ロワイヤル」だけは売却済みになっていた。
そんな事情により、テレビドラマや同名のパロディ映画はあるのだが、
イオン・プロダクションによる映画化は、21作目にして今回が初めてになる。
まさに満を持して登場した第1作目の「007」は、殺しのライセンス=00<ダブル・オー>を取得する前後の
若きジェームズ・ボンド(ダニエル・クレイグ)が主人公である。
「最初の任務は、自分の愛を殺すこと」という宣伝文句に誘われてあまり期待感もなく見に行くと、
それは想像を遙かに超えたスリルの連続、緻密なドラマ、そして深く儚い感動のラブストーリーだった。
オープニングから度肝を抜かれる。
もうどんなアクションシーンをみても驚かないと思っていたが、
今作のアクションはCGでは再現できない、生身の迫力満載だった。
ほとんどのシーンはダニエル・クレイグ本人がやったそうだが、
人間離れしたアクションもすべてリアルに感じられ、
見ているだけで汗が出、息が切れ、痛みを感じさせるものだった。
ストーリーの骨格は、世界中のテロリストの資金源となっている「謎の男」の正体を突き止め、
莫大な金が闇に流れるのを防ぐというシンプルなものだが、
登場人物たちの心理描写や話の伏線が複雑に絡み合っていて、
推理小説を読み解くような面白さに溢れている。
そして、物語に花を添えるボンドガールは、
今までのボンドガールとは一線を画すまさに「運命の女」として登場する。
ボンドが初めて本気で愛する女性、ヴェスパー・リンド(エヴァ・グリーン)は、
英国財務省の職員というお堅い役柄で、かつてのボンドガールとは全く違った印象の知性あふれる美女である。
00<ダブルオー>となったボンドを相手に一歩も引かぬ勝ち気で聡明なヴェスパー。
はじめのうちはお互いに疎ましい存在なのだが、幾多の危機を共に乗り越えるうちに恋に落ちてゆく。
物語の進展とともに徐々になぞが明らかになっていき、その一方ではさらになぞが深まっていく。
そしてラストでは、意外な真相が明らかになる…。
なにかと話題になるのがキャスティングだが、ショーン・コネリーに始まるボンド役は、
今回のダニエル・クレイグ(英国)で6代目になる。
クールでタフ、ユーモアも感じられるD・クレイグは、ニューボンドにぴったりだった。
そしてボンドガール役のエヴァ・グリーン(仏)は、デビュー作「ドリーマーズ」(03)を監督した
巨匠ベルナルド・ベルトルッチに「常軌を逸するほどに美しい」と絶賛され、仏を代表する女優になりつつあるが、
今作のヴェスパー役もまさにはまり役だった。
敵役も含め、各国のすばらしい役者が揃い、ドラマの完成度を高めている。
今作はタイトルどおりカジノがメインステージとなるが、
大金を賭けたポーカーゲームのシーンは手に汗握る緊張感にあふれ、
そのゲームの最中にもボンドとヴェスパーの恋の駆け引きがあったり、
敵役となるル・シッフル(マッツ・ミケルセン)との心理戦があったり、
さらにテロ組織との乱闘があったりと見せ場がたっぷり用意されている。
また、ブリオーニのタキシード、オメガの腕時計、
英国車アストン・マーチンなど細部へのこだわりも贅沢で楽しめるし、
チェコのプラハ、カリブ海のハバナ、イタリアのヴェネチアなどなど、
世界各地の美しいリゾート地を訪れるのもなかなか見所である。
プロデューサーのマイケル・G・ウィルソンの言葉、
「これは、すべてを最初から作り直す気持ちで臨んだ作品。
過去のシリーズと切り離して観て欲しい」にあるように、
まさに「原点回帰」をテーマに作られた作品に仕上がっている。
どのようにしてジェームズ・ボンドが「007」になっていったのか?
上司M(ジュディ・デンチ)の命令に背き、ミスを犯し、敵に拷問され、女性と恋に落ちと、
さまざまな運命に翻弄されながら、少しずつクールで無敵の「007」になっていく。
そうした人間くさい主人公こそ、新しいジェームズ・ボンドの魅力であり、
実は原作者イアン・フレミングが描いた「007」だったのであろう。
約2時間半、たっぷりと楽しめる超一級のエンターテイメント作である!
109みなとみらい
DATA
英国、チェコ、ドイツ、米国合作映画/2006年/144分/監督(マーティン・キャンベル)/
製作(マイケル・G・ウィルソン、バーバラ・ブロッコリ)/音楽(デヴィッド・アーノルド)/
出演(ダニエル・クレイグ、エヴァ・グリーン、マッツ・ミケルセン、ジュディ・デンチ、ジェフリー・ライト)
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