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「バッテリー」
知人から、珍しくメールが届いた。
最近みた映画の話だった。
その後、メールが来るたびに、ある回数が増えていく。
2回、3回、4回…、それは、映画「バッテリー」を見た回数だった。
そんなにいいのなら、せめて1回は見ようと思って、出かけてみた。
少年野球の話である。
類い希な才能をもった天才ピッチャー原田巧(林遣都)は、身体の弱い弟・青波(鎗田晟)のため、
岡山県の静かな田舎町に一家で引っ越してきた。
まだ中学にあがる前だが、その速球は、大人でも捕球できないほど速く、威力がある。
地元の少年野球チーム「新田スターズ」のキャッチャーが永倉豪(山田健太)。
二人がバッテリーを組み、野球を通じて成長してゆく物語である。
とにかく、巧と豪が役も役者も両方ともとてもよかった。
特に豪は、天真爛漫で底抜けに明るく、優しくて、最高の笑顔で巧を支えていく。
一方の巧は、天才ピッチャーでありながら、口数少なく、どこか影を感じさせる子供だ。
二人は、運命に導かれるままに交流を深めていく。
巧の速球を5球目で捕球した豪をみて、
「このキャッチャーを僕は絶対に手放さない!」と巧が言うと、
「お前はつべこべ言わず、投げればいいんだ!」と豪。
会話をキャッチボールに例えることがあるが、まさにキャッチャーは相手の投げかけてくるメッセージを受け止めること、
そして、それは言葉ではなく、相手の心を受け入れることなんだと思った。
それは大人でもとても難しいことで、子供ながらにとても感心してしまった。
中学に入学して野球部に入り、立ちはだかる大人の壁に衝突し、
ライバルとの競争があり、淡い恋や兄弟愛、親子愛があり、友情がある。
中学生の日々の生活の中に、こんなにもいろいろな出来事があったんだな〜というくらい、
たくさんのエピソードが詰め込まれ、それを無理なく2時間の枠に収めてしまっている。
原作もさることながら、脚本もいいんだなと思った。
順風満帆と思える前半から、豪腕バッターの登場で後半、暗転する。
二人の間にも亀裂が入り、見ていて辛いシーンが続く。
しかし、その壁こそ、次の世界が拓ける扉となっている。
もろもろに散りばめられたわだかまりが、終盤にかけて次々と氷解していく。
あれもこれもうまくいかないように思えていたことが、
実はどこかで繋がりあっていて、1つの壁を乗り越えることで他のこともすべて好転していく。
こういうことってあるな、と共感を覚えた。
弟の青波が容態を悪化させ入院し、もうろうとした意識の中でつぶやくシーンがある。
「もうすぐ死ぬんだと思うことがある。
そんなとき、兄ちゃんが着るユニホームの擦れる音で、
こっちに引き戻されるんだ」。
巧は、その弟の思いを無意識に感じて、ずっと「孤独な野球」を続けていたのだが、
最後の試合で、「みんなの野球」に変化する。
ずっと弟をひいきしていた母親が初めて応援に駆けつけ、
父親は初めて野球チームに入る。
マウンドに立つ巧が、初めて見せる笑顔!
登場人物たちの気持ちが心の底まで真っ直ぐ届いてくるような、いい映画だった。
有楽座
DATA
日本映画/2007年/119分/監督(滝田洋二郎)/製作(黒井和男)/
原作(あさのあつこ)/脚本(森下直)/音楽(吉俣良)/
出演(林遣都、山田健太、鎗田晟、蓮沸美沙子、天海祐希、岸谷五朗、菅原文太)
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