|
「おばあちゃんの家」
−The Way Home…−
1964年生まれのイ・ジョンヒャン監督の長編第2作がこの「おばあちゃんの家」である。
韓国では、大鐘賞最優秀作品賞を受賞。
また、おばあちゃんと孫の交流という地味なテーマでありながら、
観客動員数400万人(歴代7位)という大ヒットを記録している。
イ監督は数少ない女性映画監督であるが、その才能は、この作品でも存分に発揮されている。
インタビューで、「これは芸術映画ではない。愉快で、爽やかで、胸に訴える娯楽映画を作るのが目標だった」
と語っているが、その目論見は見事に成功している。
当初予定2ヶ月の撮影が6ヶ月に及ぶなど、幾多の苦難を乗り越えての作品作りであり、
才能プラス情熱、地道な努力には、敬意とともに感動すら覚える。
全編にわたってユーモアに溢れ、いくつものエピソードが伏線となって物語を織りなし、
とうとう最後には清々しい感動に包まれるという、文字通り完璧な「娯楽作品」である。
舞台となるのは、韓国のひなびた山村である。
この村を飛び出した娘が都会で男の子(サンウ)を授かるが、その後夫と別れ、仕事も失い、
新しい職探しの間、村のおばあちゃんに子供を預けるというところから物語がはじまる。
このおばあちゃんは耳が遠く、しかもしゃべることができない。
一方のサンウは都会育ちの悪戯盛りで、我がまま放題である。
前半は台詞も少な目で静かに展開してゆくが、孫と祖母のやり取りが小気味よく、
とりわけ音楽が効果的に使われている。
おばあちゃんの愛情、サンウの無邪気さ、自然のコントラストなどが楽しい音楽に乗せて
画面いっぱいに映し出されるのをただ観ているだけで、何ともいえぬ幸福感に包まれる。
ロケ地となった韓国中央部にあるヨンドンの風景は、殊の外美しい。
主演のおばあちゃんをはじめ、出演者の大部分は、この村で暮らす普通の人々である。
映画を1度も見たことのない主演女優=キム・ウルブン(おばあちゃん)の仕草や表情は、
ありのままの日常だからこその、演技を超えた魅力を放っていた。
おばあちゃんの留守中に雨が降り出して洗濯物がずぶ濡れになるシーンがある。
サンウは嫌々ながら取り入れるが、そのあとすぐにまたカッと晴れ渡る。
エピソードの可笑しさと映像の美しさで「2度おいしい」シーンであるが、
こういうシークエンスで貫かれていることが、作品を魅力的にしているように思う。
サンウが夜中に鶏肉を食べる影が暗がりに浮かび上がる描写も同様で、
脚本のもつユーモアと映像の美しさが相乗効果をもつように、1コマ1コマが丹念に作られている。
よく「無償の愛」という。
無償のつもりで無意識のうちに見返りを期待していることもあるが、
といってボランティア精神で愛を語るのも妙なことではある。
ともかく、誰かから受けた無償の愛は、人を愛する力になるに違いない。
おばあちゃんの無償の愛は、サンウの心を変えていった。
ラストのバスのシーン、針山にたくさんの針が刺さったシーン、サンウが描いた絵はがきのシーン、
どれもがおばあちゃんとサンウの絆を象徴して感動する。
こんな作品を作ったイ監督は、ただ者ではない!
4月、永眠した「ばーば」に捧ぐ。
DATA
韓国映画/2002年/監督・脚本(イ・ジョンヒャン)/撮影監督(ユン・ホンシク)
音楽(キム・テホン、キム・ヤンフィ)/出演(キム・ウルブン、ユ・スンホ)
|