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「四月の雪」
−April Snow−
「八月のクリスマス」「春の日は過ぎゆく」に続くホ・ジノ監督の恋愛劇3作目。
小津安二郎監督を敬愛するというホ監督が役者たちに語り続けた言葉は、
「どんなことにも、正解というものはない」だったそうである。
ちょっと内容にも触れてしまうが、
「四月の雪」(原題は「外出」)は、配偶者の不倫を知ったインス(ペ・ヨンジュン)とソヨン(ソン・イェジン)が
互いの傷を修復するうちに自分たちも不倫関係になっていくという話である。
ストーリーは、それほどドラマチックでもないし、
主人公たちに感情移入が十分できないで見ていたので、
「ふ〜ん」って感じで見終わってしまった。
鑑賞後、プログラムを読みながら復習するうちに、ようやくテーマが見えてきた気がした。
イントロダクションに書かれている「不倫と純愛の間」がそれである。
どちらか一方ならわかりやすいが、この物語は「不倫」と「純愛」の間を微妙に行き来する。
純粋に愛したり、憎んだり、喜んだり、悲しんだりであればスッキリするが、
この物語の二人は、つねに複数の感情の中でユラユラしながらもがき苦しむ。
似たような経験がないと、そういう辛さはわかりにくいのかもしれない。
主人公たちの葛藤が続く中で、ホッとさせるシーンがいくつかあった。
特によかったのは、インスとソヨンが初めて一緒に食事をするシーン。
とても自然な空気に包まれ、二人が初めて心を通い合わす瞬間が描写されていて微笑ましい。
実は、ここでは決められた台詞がなく、「インスとソヨンとして会話をしてみて」くらいの指示だったという。
「私たち、不倫しましょうか?」というドキッとするような台詞も、
ソン・イェジンが即興で作った台詞だったという。
渡辺淳一の「失楽園」(1997)以降、「不倫」という言葉が広まり、
今では何でもかんでも「不倫」で片付けられていて、なんとも子供っぽい気がする。
不倫と浮気のニュアンスも、なんとなく違うように聞こえる。
どっちがいいという問題ではないけれど、少なくとも「浮気と純愛の間」という設定はないだろうと思う。
20代の頃は、「自分が感動した作品=いい映画」という図式でものを考えていた。
ところがあるとき、自分が駄作と思っていた作品(スピルバーグ製作総指揮の「ディープ・インパクト」)で、
大感動している人を見て以来考え方が変わった。
冒頭のホ・ジノ監督の言葉とも重なるが、何事にも絶対的な答があるはずだと漠然と信じていたが、
意外にも世の中は様々な答からできているのかも、と思うようになった。
優柔不断で矛盾だらけを許容できる、それが成熟した「大人」なのかもしれない…。
「四月の雪」が撮影されていた3月、韓国のサムチョクに100年ぶりの大雪が降り、
美しい4月の雪のシーンが撮影されたという。
雪道を車で走っていくラストシーン、なかなか粋な会話で幕を閉じ、
素晴らしく品のある後味が残った。
スカラ座に展示されていたソン・イェジンの手形
(ヨン様のは行列が長くて近寄れませんでした…)
DATA
韓国映画/2005年/監督・脚本(ホ・ジノ)/製作(ペ・ヨングク)/
脚本(シン・ジュノ、イ・ウォンシク、ソ・ユミン、イ・イル)/音楽(チョ・ソンウ)/
出演(ペ・ヨンジュン、ソン・イェジン、イム・サンヒョ、キム・クァンイル、チョン・グックァン)
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