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「愛、アムール」
-Amour-
2012年カンヌ国際映画祭パルムドール受賞。
2013年米国アカデミー賞最優秀外国語映画賞受賞。
ついつい期待が高まるが、受賞作が必ずしも面白いわけではないことは、過去に何度も経験している。
今作もその一例になってしまったのかもしれないが、それは難解だからとか、
主人公に共感できないからではなく、主題があまりにシリアスで重いためであった。
「アムール」は、フランス語で「愛」を意味する。
パリに暮らす老夫婦ジョルジュ(ジャン=ルイ・トランティニャン)とアンヌ(エマニュエル・リヴァ)の愛。
元音楽家の二人は、その晩も愛弟子のピアニスト、アレクサンドル(アレクサンドル・タロー)の演奏会に出かけてきた。
豊かで満ち足りた老後生活を送ってきた二人だったが、
その翌朝、突如、アンヌが認知症を発症させ、生活が一変してしまう。
手術の後、「2度と病院には戻さないで」と懇願する妻の意思を受け入れた夫は、
徐々に進行する病魔を相手に、期限のない戦いを強いられるのだ。
映画で描かれている終末期の状況は、日本も同じであろう。
少子化と一極集中、共稼ぎと核家族化、医療の高度化、高齢化など、様々な条件が重なって、
終末医療や老老介護が社会問題化している。
在宅介護サービスがあっても、24時間体制の対応は不可能だ。
365日24時間、万全の体制を求めれば、施設や病院へという話になるが、
最期を迎える場所として積極的に選ぶ人は少ないだろう。
在宅介護を選択したジョルジュとアンヌが辿り着いた最後の選択は、
かなり衝撃的なものだった。
「これも愛なのか?」
見た者それぞれに自問自答せざるを得ない結末に、
この作品の抜き差しならない問題提起がある。
ミヒャエル・ハネケ監督は、前作「白いリボン」(09)と今作の2作連続でカンヌのパルムドールを獲得している。
すでに70歳での偉業である。
主演したジャン=ルイ・トランティニャンは、名作「男と女」(66)で名声を博した81歳。
一方のアンヌは、広島を舞台にした「二十四時間の情事」(59)で日本にもファンの多い85歳である。
「お年寄りがよく頑張ったね」ともいえるが、
そういう年齢にならなければ創れないものがある、と考えた方が楽しみでいい。
三谷幸喜監督の傑作「みんなのいえ」(01)の中で、こんなやりとりがあった。
「夕飯は食べないんです」という唐沢寿明扮する建築デザイナーに対して、
田中邦衛扮する大工の棟梁が「そんなんじゃ、長生きできねえぞぉ」と言う。
「長生きなんか、したくないですから」とすぐさま言い返す唐沢に、
「若いヤツは、みんなそういうけどな」と口を尖らす田中。
死に対しては、その距離感のようなもので、
明らかに世代間ギャップがあるように思う。
それゆえ親子でも死生観は異なり、自分の死に方も簡単には選べないのだ。
「死を考えることは、生きることでもある」と、何かで読んだのを思い出した。
銀座テアトルシネマ
DATA
フランス・ドイツ・オーストリア映画/2012年/127分/ビスタ/
監督・脚本(ミヒャエル・ハネケ)/製作(マーガレット・メネゴーズ他)/
出演(ジャン=ルイ・トランティニャン、エマニュエル・リヴァ、イザベル・ユペール)/字幕(丸山垂穂)
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