「アバウト・タイム 愛おしい時間について」
-ABOUT TIME-
 
 
 
なんと愛おしい作品だろう。
久しぶりに物語の中の登場人物たちに嫉妬してしまった。
こんなにも魅力的な人物たちの幸せな出会い、目映い時間がとっても羨ましくなった。
とりわけ、監督が個人的好みで選んだというレイチェル・マクアダムスがいい。
彼女だからこそのメアリーがこの作品に特別な輝きをもたせているといっていいだろう。
彼女ばかりでなく、主役のティム(ドーナル・グリーソン)の実直そうな風貌もよい。
そして、最愛の息子ティムに人生を生き抜く術を伝授する父(ビル・ナイ)が実に味のある人物で、
優しさとユーモアと思慮深さと強さと、様々な情感をもち合わせながら、
ゆったりとさりげなく人生に対峙している姿をみて、この父こそが我が理想と思えた。
その妻(リンゼイ・ダンカン)も独自の自分らしさをもった女性で、とても魅力的だった。
 
これを知ってもさほどマイナスにならないと思うので書いてしまうが、
ティムや彼の父は、タイムトラベルの能力をもっている。
なぜか、代々男のみに遺伝する家系なのである。
その能力にも制約があって、それゆえにドラマチックで面白いのだが、
よくある家族の物語のようでSF映画、というところが風変わりでユニークな作品である。
 
タイムトラベル映画でベスト5を挙げよといわれれば、
ウディ・アレン監督の「カイロの紫のバラ」(85)に「ミッドナイト・イン・パリ」(11)、
本広克行監督の隠れた傑作「サマー・タイムマシーン・ブルース」(05)、
トム・クルーズとエミリー・ブラント共演の「オール・ユー・ニード・イズ・キル」(14)、
韓国映画をキアヌ・リーブスとサンドラ・ブロックでリメイクした「イルマーレ」(06)辺りだろうか。
「バック・トゥ・ザ・フューチャー」や「ターミネーター」シリーズもいいが、
「アバウト・タイム」(13)はドーンと上位に入ってきた感じである。
 
「残り24時間しか生きられないと告げられたら何をする?」
友人と交わした何気ない会話から、カーティス監督はこの物語を着想したという。
タイムトラベル能力を使って、失敗したら過去に戻ってやり直す。
実直だがどこか冴えない感のある21歳のティムは、この能力を駆使して恋人づくりに精を出す。
失敗もあるが、そのたび過去に戻り修正を繰り返して、とびきりキュートなメアリーに出会う。
その後もあらゆる極面でこの能力を活かして人生を切り拓いていくのだが、
やがて、どうにもならない現実に立ち向かわねばならないときが来る。
そこからエンディングにかけてが、この作品で監督が最も言いたかったことなのだろう。
かけがえのない時間をどのように過ごすのか。
父と息子が最後に向かった「過去」に、僕はしみじみ泣いてしまった。
 
なんて愛おしい作品なんだろう。
残り何時間、何日間、何年間生きられるかわからないけど、
この映画の主人公たちのように生きていけたら、と思う。
 
 
 
DATA
英国映画/2013年/124分/シネスコ/ドルビーSRD
監督・脚本(リチャード・カーティス)/製作(ティム・ビーヴァンほか)/
製作総指揮(リチャード・カーティスほか)/音楽(ニック・レアード=クロウズ)/
出演(ドーナル・グリーソン、レイチェル・マクアダムス、ビル・ナイ、リンゼイ・ダンカン、マーゴット・ロビー)/
字幕(稲田嵯裕里)