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「3時10分、決断のとき」
−3:10 TO YUMA−
舞台はアリゾナ、西部劇である。
赤く乾いた大地に埃が舞い、遠くでハゲタカが旋回。
そんないかにもな世界で出会う二人の男。
牧場主のダン・エヴァンス(クリスチャン・ベイル)は、干ばつ続きで経営に行き詰まり、
借金の返済に追いつめられていた。
一方、「神の手」の異名をもつ早撃ちのベン・ウェイド(ラッセル・クロウ)は、凶悪な強盗団のボス。
やがて牧場主ダンは、保安官らに捕まったベンを刑務所まで送り込む護送役として名乗り出ることになる。
無事に護送できれば見返りの200ドルで借金が返済できるが、
その任務は常に死と隣り合わせの過酷なものだった。
裁判所のあるユマ行きの列車が3日後の3時10分、コンテンションの町を発車する。
そのとき、何が起こるのか…。
今作は、「決断の3時10分」(57)のリメイク版である。
ジェームズ・マンゴールド監督は17歳のときにみたオリジナル版にいたく感動し、
いつか映画監督になったら再映画化したいと熱望していたそうだ。
それから30年もの間温めてきた夢を実現させた本作は、
全編に渡って緊張感が途切れず、魂のこもった見応え感たっぷりの力作に仕上がっている。
ラッセル・クロウ扮するベン・ウェイドが、やはりカッコイイ。
金のためなら容赦なく人を撃ち殺す強盗団のボスなのだが、
聖書をそらんじ、鉛筆画を趣味とする一面もあり、人間的な深みを感じさせて魅力的だ。
牧場主ダン役のクリスチャン・ベイルもいい。
今年公開の「ターミネーター4」(09)でも男っぷりがよかったが、
内面に沈んだ深い悩みをいつか克服しようとする主人公の強い信念が表情に現れていて、惹きつけられた。
シンプルな物語なのだが、その間にさまざまな仕掛けがあって、息つく間もない。
駅馬車襲撃シーンをはじめ、アパッチ族との銃撃戦やクライマックスの壮絶な銃撃戦など、
西部劇ならではの見せ場も多いが、
その一方で、二人の男が何を大事にして生きているのかが常に問われ、
1つ1つ確かめるかのように解がとかれていく過程が心に染みてくる。
オリジナル版では単なる子役だったダンの息子ウィリアム(ローガン・ラーマン)が活躍するのも重要で、
息子の目線が加わることで主人公らの内面の葛藤がより深く描写されたように思える。
ラストシーン、自らの誇りのために戦い尽くした男たちの決断に、涙があふれた。
製作のキャシー・コンラッドが西部劇の魅力を次のように語っている。
「西部劇には人々が直面する苦悩に人の心を惹きつける魅力がある。
問題を解決するのに楽な方法なんてひとつも存在していない。
自分自身を徹底的に掘り下げて、自分自身や自分にとって大切なものについて考えるのよ。
本作の舞台は過去だけど、テーマ自体はとても現代的だわ。」
今さら西部劇かと思っていたら、期待は小気味よく裏切られるだろう。
今日的で根源的なテーマを内包した、実にすばらしい作品である。
DATA
米国映画/2007年/122分/監督(ジェームズ・マンゴールド)/製作(キャシー・コンラッド)/
脚本(ハルステッド・ウェルズ、マイケル・ブラント、デレク・ハース)/
原作(エルモア・レナード)/音楽(マルコ・ベルトラミ)/
出演(ラッセル・クロウ、クリスチャン・ベイル、ピーター・フォンダ、グレッチェン・モル)
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