2020年に続いて新型コロナ禍での日々となった。1年遅れで東京オリンピックが開催され、大いに盛り上がったが、その反動で感染者が急拡大してしまった。まん延防止措置の発令、解除を繰り返しながら、社会全体がコロナを前提としたものに変わってきている。外食店がつぶれて宅配が増えたり、出張がなくなってリモート会議になったり。ライブや映画館にもすっかり行かなくなり、映画もほとんどがDVD観賞となった1年だった(107作品:劇場4、DVD103)。
2021
cineMa
top20
1位 麗しのサブリナ 1954年(米国)
永久保存版の名作 ★★★★★
 時々、思い出したようにビリー・ワイルダー作品が観たくなる。今作は、名前は知っていたが、なぜかあまり触手が動かず、今回も半ば義務的に観たのだったのだが…。N.Y.から50kmにある実業家ララビー家の豪邸紹介から始まるところは、ちょっと「サンセット大通り」(50)のようだった。屋内外に整備されたテニスコートにプール、小さな池にも専門家が雇われていて、そこで飼われている金魚の名前がジョージ(と言ってたと思う)というように、さりげないナレーションにもユーモアが散りばめられていて、いちいち面白く、一瞬で引き込まれてしまった。高級車がずらりと並ぶ中でも最高級であろう英国の名車ロールスロイスは運転手付きで購入し、その娘がサブリナ(オードリー・ヘップバーン)という立て板に水のごとく流暢なオープニングをみて、さすがはビリーワイルダー監督と惚れ惚れとしてしまった。ものの数分足らずの幕開けですっかり魅了されてしまったのだが、本編も素晴らしく、褒めちぎたくても私のボキャブラリーでは全く役に立たない。映画芸術がもつ粋を凝縮したようなとても幸せな113分だった。パリ留学先の個性的な料理の先生、同じ学校の生徒である老齢の男爵の含蓄ある助言、すべてのシーンが永久保存版にしたくなるような名場面の連続だった。ハンフリー・ボガード扮する主人公ライナスが、個人的に大好きな名作「カサブランカ」(42)のリックとかぶって見えてしまったが、それも悪くはなかった(笑)。ヨットでレコードをかけるシーンなんて、絶対あのシーンへのオマージュだなって思ったり、勝手に想像して楽しめた。それにしても、今作がオードリー・ヘップバーン主演2作目だったとは驚き!美しいだけでなく、さりげない表情などの演技が素晴らしく、やっぱり映画史に残る女優さんなんだなと改めてその魅力に酔いしれた。

2位 善き人のためのソナタ 2006年(独)
正義ではなく善の話 ★★★★★
 2021年12月、アンゲラ・メルケルさんが16年間に渡るドイツ首相の任期を終えた。彼女の評伝「アンゲラ・メルケル」を読んでいたら、今作のことが載っていて、この映画についての感想を訊かれた彼女の回答に興味を持った。曰く、「いいえ、あれよりもっとひどかったわ。映画みたいに、こちらが感情移入してしまうような善良なシュタージなんかいませんでした。」西ドイツで生まれたメルケルさんが東ドイツに移住し、映画が描いている頃は物理学の博士号を取得していたんだな〜と思いつつ、当時の息が詰まるような緊迫した空気にハラハラ、ドキドキしながら観た。命、自由、経済、芸術、大事なものがたくさんある中で何よりも大事なものは何か、この作品が問いかけてくるものの奥深さに感動した。文句なしの秀作、記憶に残る名シーンの数々だった(劇場で観ればよかった)。

3位 それだけが、僕の世界
 2018年(韓国)
似て非なる秀作 ★★★★
 う〜ん、久しぶりにいい映画を観た!って余韻に浸っている。公開時に全くケアしておらず、3年遅れになったが、家族愛を描く韓国映画には、時々もの凄い秀作がある。と書きつつ、映画を観ながら思い出していたのは、チェン・カイコー監督の中国映画「北京ヴァイオリン」(02)だったが(笑)。今作は、何よりシナリオがよく練れている。障害をもつ家族を描いた作品は幾多とあり、「海洋天堂」(10)や「くちづけ」(13)など本当に素晴らしい作品がたくさんある。どのように新規性や独創性のある作品にするかとても難しいと思うが、今作は、いつか観たような既視感を抑えて、新鮮な感動をもたらしてくれる。それは例えば、兄ジョハ(イ・ビョンホン)が単にいい兄ではなく、彼自身が両親に対する拭いきれない憎悪を抱え、日々の生活さえ不安定という設定やサヴァン症候群の弟ジンテ(パク・ジョンミン)が暴力的な兄を怖がりながらも慕い、格闘ゲームでは圧倒的に兄を打ち負かしてしまうとか、シリアスな部分とユーモラスなテイストのバランスが絶妙によかった。登場人物らに関する細やかな設定が縦横無尽に張り巡らせてあって、それらが徐々に結びつき、感動のクライマックスに収斂していく展開に引き込まれた。そうそう、ジョハと母インスク(ユン・ヨジュン)のダンスシーンもとっても印象的だった。勿論、ダブル主演ともいえるイ・ビョンホンの自由自在で安定した演技とサヴァン症候群かつ名ピアニストという難役を非常に自然体でみせてしまうパク・ジョンミンの奇跡的な演技あってのもので、シナリオ、キャスティング、演出、演技…、すべてがうまく融合して初めてできあがる完成度の高い作品である。

4位 詩人の大冒険 1993年(香港)
馬鹿馬鹿しい可笑しさ ★★★★
 「0061北京より愛を込めて!?」(94)がツボだったので観てみた。「ぴあ映画生活」での評価が低いのも何となくわかるがとても面白かった。間抜け、おとぼけ、馬鹿っぽいのに実はスゴイ人っていうタイプが好きなので、個人的にはツボった。「0061…」同様に、とにかく馬鹿馬鹿しい展開が、いちいち面白かった(笑)。中国の古典が元らしい趣も楽しめつつ、コメディあり、ロマンスあり、アクションありのハチャメチャな展開で飽きることがない。最後の最後まで目が離せなかった。

5位 青くて痛くて脆い 2020年(日本)
可能性Z ★★★★
 原作未読だが、住野よる氏の「君の膵臓をたべたい」は原作、映画ともに好き。今作は主演二人の演技も大変素晴らしく、ぐいぐい引き込まれた。主人公の田端楓(吉沢亮)と秋好寿乃(杉咲花)は、どちらもデフォルメされた人物設定だが、誰もが共有し得る部分をもっていて(たぶん)、突き詰めていくと今作が描くような深刻な問題に辿り着いてしまうという展開がとてもスリリングで楽しめた。理想を追い求めることと現実と折り合いをつけることは共存不可能なのか、目的を変えずに手法を変えることは嘘になるのか、といったことで主人公らが葛藤する姿は、現代社会にも通底する問題が感じられ、新感覚の青春ドラマという印象をもった。クライマックスのパラパラ漫画もよかったし、楓が無駄に過ごしたと思った4年間の意義を予感させるラストシーンの描き方もなかなかよかった。それにしても、Z世代である主人公らのネットリテラシーの高さには驚嘆してしまった(汗;)。

6位 パッドマン 5億人の女性を救った男 2018年(インド)
村一番の頑固者(笑) ★★★★
 相変わらずインド映画から目が離せない。バッドマンならぬパッドマン!(笑)。テーマ曲がこの新しいヒーローについて明確、的確に歌い上げているが、「弾を撃ったり、高いビルから飛び降りたり、歌ったり踊ったりしない♪」これまでにないヒーロー像が斬新に感じられた。古い風習が残るインドでタブーだったように、個人的にも生理用品を題材にした物語に少し心理的な壁があった。特に前半は、村人の反応がそうであるように、主人公ラクシュミカント(アクシャイ・クマール)の破天荒ぶりに食傷気味だったが、その頑固な信念が村人達の意識を変え、国連が認め、国が賞賛する後半が見所だった。とりわけ国連での演説は、それが周到に準備された演出だとわかっていても、心が震えるような素晴らしいスピーチだった。

7位 コンフィデンスマンJP プリンセス編 2020年(日本)
満腹で〜す。 ★★★★
 1作目「ロマンス編」は、個人的にはちょっと物足りなかったので、実はあまり期待せずに観た。それが奏功したのかわからないが、スリリングかつゴージャスな展開が堪能できた。古沢良太さんの脚本は、いつもながら伏線の嵐だったが、今作ではさらに尋常ではないくらい天こ盛り!終盤の畳みかけるような回収シーンの連続に口をあんぐり開けたまま、ただただ呆気にとられた(笑)。海辺の長沢まさみさん母さん、美しかった!最後の最後のオチにも笑えたが、エンドロールが終わってもまだ続くしつこさが堪らない!なかなかいい話もあり、とっても充実したエンターテイメント作品だった。ご馳走様でした。

8位 細雪 1983年(日本)
和の美極まれり ★★★★
 「陽が射すと すぐに溶ける ささめゆき その儚さ 美しさ」そのコピーに集約される例えようのない和の美を感じる作品だった。美といってもきれいな作り話ではなく、人間の欲や業などがしっかり捉えられ、美醜含んでの奥行きのある美しさだった。舞台は大阪船場、老舗商家が斜陽し、伝統的格式を重んじながら新しい時代の波に飲み込まれてゆく四姉妹、四人四様の生き様が丹念に描かれる。丹念、例えば、船場言葉や着物の帯選びといったシーンに感じられるが、これは容易なことではないだろうなと想像できる。そして、この四姉妹を演じる女優陣が実にすばらしい。たぶん笑うシーンではないのだが、何度もクスッと笑ってしまったのが、佐久間良子さん演じる次女・幸子だった。あくまで本家の立場でものを言う長女・鶴子(岸惠子)と、どちらかといえば気楽な三女・雪子(吉永小百合)、奔放な四女・妙子(古手川祐子)との間に挟まれて、この姉妹を陰でまとめる大変な役回りに辟易しているのについつい世話を焼いてしまう人柄のよさ、可愛らしさが堪らない。こんな素敵な奥さんをもっていながら、いや、だからこそなのか、その亭主・貞之助(石坂浩二)は未婚の美しい雪子を密かに想っていたり、それをまんざらでもなさそうに受け止める雪子の佇まいを吉永小百合が抑えた演技で好演していて、そこはかとない日本純文学的な味わいを十二分に堪能できた。個人的に敬愛している伊丹十三さんの役どころも人間らしさを感じる素晴らしいものだった。原作は未読だが、とても印象的なラストシーンだった。この部分の脚本が市川監督の妻・和田夏十さんの遺作になったと知り、胸が熱くなった。

9位 シェイプ・オブ・ウォーター 2017年(米国)
境界越えの愛 ★★★★
 ギレルモ・デル・トロ監督作品は、「パンズ・ラビリンス」(06)しか観たことがないと思うが、あまりピンと来なかったので、今作は意識的に期待値を下げて観賞した(笑)。サリー・ホーキンス扮するイライザに共感できるかが鍵かなと思いながら観たが、全く個人的には「パディントン」シリーズでの彼女のとても慈愛に満ちた演技に重なるところがあって、「そりゃないだろう!」と思える突拍子もない行動にも何とか気持ちを寄り添えることができた。イライザの生い立ちについてはほぼ説明がなく、相手役の半魚人(?)についても同様で、だからこそ調査対象になっているという設定だが、そこで陳腐にならずに興味をそそられるところが本作のすごさであり、魅力だと思う。タイトルに込められた監督の強い「愛」が作品の隅々まで行き渡っているようにも感じられた。主人公の特別な生い立ちと他者との「境界」を超える交流を描いている点では、ロバート・ゼメキス監督の「コンタクト」(97)と似た感動があった。「ぼくのエリ 200歳の少女」(08)や「タイタニック」(97)など非常に多くの作品と同様に、「ロミオとジュリエット」的な展開がうまくはまった作品で、とても好感がもてた。このシーン、必要なのかなってところも含めて結構、楽しめた(笑)。

10位 劇場版「鬼滅の刃」無限列車編 2020年(日本)
うまい!うまい! ★★★★
 コロナ自粛が続いているが、2020年の社会現象ともなった今作はどうしても劇場で観たいと思い、約1年ぶりに映画館へ行った。実のところ、原作もアニメも見る時間がなく、ネットで幾つか予習向けのサイトを見て、一夜漬けで臨んだ。従ってよく理解してない部分もあったと思うが、それでも十分に楽しめ、思わず感涙してしまう強いカタルシスがあった。コロナ禍でヒットした面もあったかもしれない。鬼は、平穏な日常を奪ったコロナと重ね合わせることができるし、コロナだけではなく、経済格差や差別やDV、ハラスメント等、観る人によって色々な解釈ができるように思えた。基本的には、日本昔話「桃太郎」と同じ構造だが、鬼退治の過程に様々な仕掛けがあるので、飽きることがない。「隠し砦の三悪人」とか「オール・ユー・ニード・イズ・キル」とか10くらいの映画を思い出させる部分があったが、それらのアイデアや技法が非常にいい形で作品に活かされていたように思う。「うまい!うまい!」もそうだが、声優さんたちの演技力も素晴らしかったと思う。圧倒的に強い鬼たちを前に、絶対に絶望しない主人公たち、特に煉獄さんのキャラクターが今作の最大の魅力のようにも思えた。とってもうまかった!

11位 MINAMATAーミナマター 2020年(米国)
ppm ★★★★
 「今更、水俣病?」というのが正直な気持ちだったが、高評価だったので観に行った(コロナ自粛のため7か月ぶりの劇場鑑賞!)。観て大正解だった。水俣病のことはある程度は知っているし、有名なユージン・スミス氏の写真も見たことはある、それでもなおこの「真実」には圧倒された。一体、どうやって撮影したのだろうと思うくらい自然に、半世紀前の熊本・水俣地域が再現されていた。その風景の中にいる当時の大人や子供の中には水俣病に冒された人達がまるで実在しているかのように描写されていて、その容姿から見えてくる「現実」に何度も涙が溢れた。凄惨な人間の姿を眼の辺りにするユージン氏の表情とジョニー・デップの今作に対する熱い思いが重なり、さらに劇中で描かれている物語と「今、水俣病を問う」現実とが重なり合って、深い感動と感銘を受けた。特に印象的だったのは、肥料工場の中で社長(國村隼)がユージン氏に説明する「工場の汚水濃度はppmレベルのごく低濃度なのです。工場が生み出す莫大な益からみれば、被害者もまたppmレベルのごく僅かなものに過ぎないのです」という趣旨の台詞だった。水俣病のことは誰もが危険と認識していても、他の多くのことになると、「ppmなら大丈夫」と同類の非科学的解釈で済まされていて、「今更水俣病」ではなく、現在進行形の問題提起だったと知る。水俣病の訴訟がまだ続いていることをこの映画で知ったが、他にも世界中の多くの公害や環境汚染がエンドロールで提示される。今作は、プロデューサーでもあるジョニー・デップの熱意とエネルギー、また金銭的な支援もあって作られたとアンドリュー・レヴィタス監督が述べていた。ジョニー・デップ主演の映画をたくさん見てきたが、個人的には、今作が一番カッコよく見えた。

12位 007/ノー・タイム・トゥ・ダイ 2021年(英国・米国)
愛の物語・最終章  ★★★★
 ついにダニエル・ボンド、完結。いかにもその集大成的な作品だった。個人的には全く007フリークではなかったが、たまたま劇場鑑賞した「カジノロワイヤル」(06)がツボって以降、このシリーズは公開を首を長くして待ち望む作品だた。オープニングは従来どおり、度肝を抜くアクションシーンの連続で期待を裏切らない素晴らしい仕上がり!それから後がややこしかった。前作「スペクター」(15)を復習してなかったので、話のつながりがちんぷんかんぷんだったのがいけなかったかな…?「カジノロワイヤル」で自分の愛を殺したボンドが、最終作では愛を取り戻すために自分の大切な○○を差し出すという展開…。う〜ん、もう一度5作通しで観たい!

13位 透明人間 2020年(米国・豪州)
見えない恐怖 ★★★★
 今作がホラーなのかスリラーなのかよくわからないが、大きな音や突然出てきてビックリさせるのではなく、心理的に怖がらす系は好きなので、なかなかこわ〜くて楽しめた。ヒッチコックの「北北西に進路を取れ」(59)なんかもそうだが、人間、逃げようとすればするほど、捕まったらどうしようという心理的恐怖心が高まる。そして敵が見えない、わからないことでますます怖くなるわけだが、今作はその勘所を押さえたストーリーと演出が冴えていて、とても見応えがあった。この手の映画のヒロインに必要な条件というのをいつか何かで読んだことがあるが、目や口が大きい美女というような条件(だったと思う)をしっかり備えたエリザベス・モスが適役だった。今回、ソシオパス(社会病質者)という言葉を初めて知ったが、H.G.ウェルズの古典をしっかり現代版として蘇らせていて、とりわけ、透明になるテクノロジーやSNSやフェイクニュースなど匿名性の社会問題を感じさせるような背景の設定などにも興味を感じながら見た。リー・ワネル監督が脚本をかいた「ソウ」(04)もなかなか実験的、独創的な作品で、完成度とは別に、そういう新たなチャレンジ精神に拍手を送りたいと思った。

14位 ムーラン 1998年(米国)
温故知新の知と美 ★★★★
 絵が綺麗。冒頭の万里の長城シーンからそのビジュアルや色使いに魅了された。テンポもよく、主人公花木蘭(ファ・ムーラン)のキャラクターや時代背景などが過不足なく伝わってきて小気味いい印象だった。「アラジン」(92)に続いてディズニーアニメ=西洋という垣根を越えたのも、今作の出来をみると個人的には好意的に感じた。宮崎駿さんがアニメを目指すきっかけとして知られている日本初のカラー長編アニメ「白蛇伝」(58)にも似たテイストがあり、古い言い伝えらしい普遍的な親子愛や人間愛が描かれていて、とても幸せな映画体験となった。

15位 オズの魔法使 1939年(米国)
ジュディーの可憐さ ★★★★
 超有名だが、初見。かの有名な「虹の彼方に」は、今作の挿入歌だったとは!改めて名作には名曲ありの感がある。独特の映像美、どうやって撮影したのか不思議な特撮シーンの数々に目を奪われる。そして、何よりもドロシー役のジュディー・ガーランドの愛らしさに魅せられた。そうか〜、これが名優ジュディー・ガーランドなんだ〜、ライザ・ミネリの母なんだ〜と、画面に釘付けになってしまった。原作は1900年にアメリカで出版された童話だが、頭脳、心、勇気、幸せの在りかについて魔法の世界を通じて語られる古典ならではの普遍性があった。それにしても、ヴィクター・フレミングは同じ1939年に今作と「風と共に去りぬ」を監督するという偉業を成し遂げており、驚くほかない。ケアーンテリア犬のトトの名演技も見所だし、唯一無二の心に残る名作だった。

17位 三人の妻への手紙 1949年(米国)
妄想の深淵 ★★★★
 これは面白い!ビリー・ワイルダー映画を観ているような気がした。ウィットに富んだ台詞とテンポのよい展開で息つく間もない(笑)。ジョーゼフ・L・マンキーウィッツ監督はあまり馴染みがなかったが、「イヴの総て」(50)の監督さんと知り納得した。冒頭の「これはフィクションです。登場人物に似た人がいたとしても、それは単なる偶然です」というナレーションからして、ニヤッとしてしまう。そんなことは承知の上で観ている観客にわざわざ断ることで物語に引き込んでゆく面白みがあるが、それは序の口で、すべての会話が一筋縄ではいかない含みがあって、しかも畳みかけるように膨大な台詞量なので、ついて行くのが大変だった。お騒がせな手紙の主アディ(セレステ・ホルム)が顔を見せないところも憎い。現実と妄想が交錯して、何が真実だかわからなくなる「羅生門」(50)とか「キサラギ」(07)みたいなストーリーは面白い。なかなかな名作だと思った。マンキーウィッツ監督の他の作品も観てみたくなった。

18位 アップグレード 2018年(米国)
クシャミに気をつけろ! ★★★★
 DVDをセットして予告編の後に本編が始まったときに、「あれ、何を観ようとしてたんだっけ?」というくらい心の準備ゼロで観たので、物語の展開は衝撃の連続だった。自動運転車を観ながら、近未来はこんな感じになるのかなどワクワクしているうちに、そんな世界だからこそ起こりうる恐怖体験にゾクゾクした。何よりも興味深いのはAIチップ「STEM」という代物!SFの世界はいつか来る世界を予言しているように感じることが少なくないが、これも十分にあり得る気がした。フィクションとリアリティとの塩梅もなかなか絶妙で十二分に楽しめた。見終えてから「なんでこの作品を探せたのか?」確認して納得した。リー・ワネル監督だったんだね!(笑)

19位 男はつらいよ 純情篇  1971年(日本)
バカだね〜、まったく! ★★★★
 序盤の旅先、五島列島・福江島でのエピソードがしみた。まるで垢抜けてない宮本信子さん(歳を重ねるほど美しくなる方!)、父役の森繁久弥さんが実の親子のような真心をみせる。そこにピッタリはまる寅さん(渥美清)の珠玉の台詞の数々に温もる。この長いシリーズでいうとまだ序の口にあたる6作目は、まだ洗練されてない粗削りな感じもしたが、本シリーズのエッセンスはすべて盛り込まれているような気もした。気難しそうな旦那をもつ夕子(若尾文子)の視点がまさにこの作品の魅力そのものに思える。「バカだね〜まったく!」なことで人は元気になれるんだね〜(笑)。

20位 Mr.インクレディブル 2004年(米国)
ヒーローもつらいね ★★★★
 ピクサー作品は同時代に観てきたが、今作は見逃し続けてようやくDVDで観賞した。ヒーローがバッシングされる時代設定が着眼点として面白い。図らずも「人の役に立ちたい」という行為が裏目に出たときに、その反対である「利己的である」ことがいいのかという問いかけがさもありなんで面白みがあった。少しずつ家族が力を持ち寄って、強大な敵と対峙する展開は、まるでアベンジャーズみたいだったが(というか王道ストーリー)、とても楽しめた!