2016年は10年ぶりの転勤があったり、他にも色々重なって余裕のない1年だった(ふぅ…)。仕事をしない休日がほとんどない状態だったので、映画100本は断念してもいいと思っていたが、結果的に101本(劇場23、DVD78)に達した。つまりは、こういうことである。「あとで映画を見るから、先に仕事を済ましちゃおう」というご褒美方式。そもそも100本にこだわる必要は全くないので、単なる道楽なのだが、目標があるのとないのとでは、モチベーションが俄然違ってくるから不思議である。人間には、そういう不思議なところや奇妙なところ、不可解なところが山ほどあって、古今東西、膨大な映画は、人間の不思議さを描き続けてきたともいえる。年間100本くらい見ていると、「ふ〜ん、そういうもんかね」と判った気にもなってくるのだが、人間の不思議さには果てがなく、また次の100本を観てみたくなるわけである。僕の映画評価は、とにかく好み優先!残念なことか喜んでいいことかわからないが、一般的評価とズレていることもままある。全作品について「ぴあ映画生活」にレビューを書いているので、他の映画ファンとのズレはその都度わかるし、違いを知ることもちょっとした興味ではある。
2016年の1位は、「パディントン」にしよう!ちょうど1年前、特に見たいものがなくてたまたま見たのだが、1年間、これを超える作品に出会わなかった。とにかく愛らしいクマなのである。ちょっと目つきがわが家で飼っているコーギー犬に似ていることで好感度が上がったのかもしれない。ペルーの森からロンドンにやってきたパディントンは、厄介者の移民熊である。その彼を受け入れるブラウン一家は、今まさに移民問題で揺れる欧州やEU離脱を決めた英国のようにも見え、普遍的なテーマを内包しているともいえる。世界的ベストセラーになっている童話が原作だが、優れた童話とは、人間にとって大切なことを子供にもわかる優しい例え話で書いたものだと思う。とにかく、見終えた時の幸福感は格別である。2位のアニメ映画「君の名は。」は2016年の代表作といっていいだろう。中高生をターゲットに始まったが、やがて中高年も巻き込み、ついに世界にもファンを広げていったパワフルな作品である。大地震や津波、竜巻など年々激しくなる自然災害が作中の隕石落下にまつわる男女のすれ違いに重なり、共感を呼んだのだろうか。絵の美しさに定評のある新海監督であるが、それだけではない脚本やキャラクター、音楽の魅力が今作の記録的ヒットにつながったのだろう。3位は、つい先月公開された「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」。1月にみた「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」より面白かったのは、スピンオフという部分で油断していたせいもあるかもしれない。感動という点では、本編シリーズを含めてもトップクラスである。「スター・ウォーズ」という舞台装置を借りつつ、ある程度自由に物語を創れたというところでうまくいったのかもしれない。自己犠牲について、改めて考えさせられた作品でもあった。4位の「ハドソン川の奇跡」も非常に意外性があった。2009年1月に起こったこの事故は、ニュースでも大々的に扱われ、あらましは知っているつもりでいた。「イーストウッド監督さん、何を今更?」という気分での鑑賞だった。監督の視線の先にあるのは、サリー機長その人ではなく、機長を取り巻くメディアという得体のしれない怪物だったのである。一度は英雄として持ち上げながら、最善の策ではなかったのではという疑惑が浮上すると、今度は手のひらを返したように叩きのめす。今、我々が利用している情報ツールの即時性、グローバル性が世論形成に与える影響力の強さ、脆さ、故の恐ろしさが浮き彫りになって、とても見応えがあった。今まさに、次期米国大統領になるトランプ氏のツイッターが世界の株価を左右してニュースになっているが、「ハドソン川の奇跡」が描き出したのは、その熱気を帯びた危うさそのものである。5位の「ガール・オン・ザ・トレイン」は、2015年の「ゴーン・ガール」に似たミステリアスな作品だった。エミリー・ブラント主演ということで期待大であったが、アルコール依存症という汚れ役、そして不倫や殺人、DVといったダークなテーマ満載で少々心が痛んだが、ラストまで見終えるとそれなりにスッキリする作品であった。昔から、クライムサスペンスには目と口が大きな女優がよく登場するが、今作は、主役級の3美女競演とあって、贅沢なキャスティングだった。この他で特によかったのは、山田洋次監督の真骨頂といった感じのドタバタ劇「家族はつらいよ」、イングリッド・バーグマンの半生を描いた「イングリッド・バーグマン〜愛に生きた女優」、謎めいた密室サスペンスのようなSF映画「10クローバーフィールド・レーン」、ビートルズの記録映画「ザ・ビートルズ〜EIGHT
DAYS A WEEK」辺りは、かなりの秀作で楽しめた。残念賞は、ジュゼッペ・トルナトーレ監督がオルガ・キュリレンコを主役に迎えた「ある天文学者の恋」、そして、余命短い金持ち老人を狙った結婚詐欺をコミカルに描いた「後妻業の女」かな。
DVD鑑賞では、とにかく見始めてしまったシリーズものを収束させたくて、「ハンガーゲーム」シリーズ4作、「るろうに剣心」シリーズ4作、「恋人までの距離<ディスタンス>」シリーズ3作をようやく見終えた。相性抜群の伊坂幸太郎原作、中村義洋監督の作品では、「アヒルと鴨のコインロッカー」、「ゴールデンスランバー」、「フィッシュストーリー」の3本いずれもがなかなかよかった、というか、自分の好みなのだろう。「ゴールデンスランバー」のエンディング・テーマ、「幸福な朝食、退屈な夕食」を聴いて、斎藤和義が少し気に入った。一番泣けたのは「君への誓い」だろうか。2014年のベスト1に選んだ「アバウト・タイム」と同様、主演のレイチェル・マグアダムスの魅力が最大限に活かされた作品である。101作品中最低だったのは、ケータイ小説の代表作ともいえる「恋空」だろう。2016年のテレビドラマ「逃げ恥」が大ヒットした新垣結衣の初期主演作であるが、高校生の恋愛模様があまりにも軽々しく描かれ、命をめぐるエピソードも陳腐でとても鑑賞に堪えない出来だった。今井夏木監督は、テレビドラマ出身で「ケイゾク」や「オレンジデイズ」などで度々監督賞を受賞している人なのに、これで納得できたのだろうか。中高生にはこのレベルで十分共感を得られるという読みなのか?原作も映画も大ヒットしているのが、どうにも信じられない。そうそう、今年も少しホラー・チャレンジもしてみた。中でも鈴木光司原作、中田秀夫監督の「リング」は、ずっと避けていたが、ビビりつつ見てみた。案外、怖くなくて拍子抜けしたが…。また2017年も、今まで見たこともないような作品を探してみたい。
2016
cineMa
top 5
1 パディントン(英国) PADDINGTON
2 君の名は。(日本) your name.
3 ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー(米国) ROGUE ONE:A STAR WARS STORY
4 ハドソン川の奇跡(米国) SULLY
5 ガール・オン・ザ・トレイン(米国) THE GIRL ON THE TRAIN