2015年に観た映画は、103本(劇場25、DVD78)。昨年に続き、年間100本をなんとか越えた。劇場だけで300本以上観ている人もいるし、DVDを含めればもっと観ている人もいるだろうけど、今の自分は、100本くらいで満腹である(笑)。
 映画を観る醍醐味の一つは、自分の知らない未知の世界に「行ける」ことだろう。2時間前後の脳内トリップに集中したいから、スマホをやりながらやポップコーンを食べながらは僕の場合はない。時々、つまらなくて居眠りしながら、はあるけど…(笑)。ただ、つまらないかどうかは、微妙なものである。同じ作品を観て面白いときとそうでもないときがあるし、10年ぶりに観て、全く違った観点からみていることもある。「この映画は全く観るに値しない。監督は、映画づくりの何たるかをわかってない。金返せ!」といった映画ファンの辛口批判を目にすることがあるが、そうハッキリ決めてかかるのもどうかと思う。現に、クソミソに批判されている低評価の作品を面白いと感じている人もいるのだから、表現は多様でいいのである。あくまで自由に作り、(R指定などの配慮はした上で)自由に選べばいい話ではないのか。もちろん、批評も自由でいいわけだけど…。
 そういった前提のうえで、2015年のマイ・ベスト5を選んでみた。1位の「きっと、星のせいじゃない」は、難病をテーマにした作品。この手は散々観たり読んだりしているので、今さら観なくてもいいなぁと思いながら観た。ベスト1にしたのは、主人公を演じたシャイリーン・ウッドリーとアンセル・エルゴートの魅力も大きい。死期が近いことを知っている若者の葛藤、死生観が主人公二人の間で交錯する脚本が秀逸で、単なるお涙ちょうだい作品ではない。この年の大河ドラマ「花燃ゆ」は正直つまらなかったが、主人公の一人、吉田松陰の死生観はこの映画に相通ずるように思えた。処刑直前に書かれた「留魂録」第八節の一部を引用する。「私は三十歳で生を終わろうとしている。(中略)。人の寿命には定まりがない。農事が四季を巡って営まれるようなものではないのだ。人間にもそれに相応しい春夏秋冬があるといえるだろう。十歳にして死ぬものには、その十歳の中に自ずから四季がある。二十歳には自ずから二十歳の四季が、三十歳には自ずから三十歳の四季が、五十、百歳にも自ずから四季がある。 十歳をもって短いというのは、夏蝉を長生の霊木にしようと願うことだ。百歳をもって長いというのは、霊椿を蝉にしようとするような事で、いずれも天寿に達することにはならない。」人の存在感や価値は、死んでからも続いていくものだと、近頃よく思う。2位の「黄金のアデーレ」は、とても見応えのある映画だった。年末、世の中は「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」で盛り上がっていたが、個人的にはこちらの方が面白かった。画家クリムトの「黄金のアデーレ」が戦時中、ナチによって収奪され、戦後は、オーストリアが国の至宝として所有していたものを、遺族が取り戻す実話に基づいた物語である。戦争がそうであるように、国家という得体のしれない巨大な存在の前に一個人の命や存在価値はとても小さくか弱い。無謀とも思えるチャレンジによって、作為的な「正義」に本物の「良心」が勝利する結末が深い感動を呼び覚ます。3位はクリント・イーストウッド監督の「アメリカン・スナイパー」。イラク戦時下で160人を射殺した実在の人物が描かれている。アメリカ側からみたイラク戦争であり、狙撃手クリス・カイルの活躍を描いた作品ではあるが、アメリカの正義を肯定し、戦争を美化する作品と見てしまっては、全く監督の意図から外れてしまうだろう。9.11、ISのテロ、シリアでの内戦…、世界各地で絶え間なく続く殺戮行為。被害者が加害者になり、罪なき人々が犠牲になっていく出口の見えない負の連鎖を前に、平常感覚が麻痺していく。かつて太平洋戦争をアメリカ側から描いた「父親たちの星条旗」(06)と日本側からみた「硫黄島からの手紙」(06)を作ったイーストウッド監督が、今作では現在進行形の戦争を描き、戦時下の地獄を見せつけ、戦争について再考を促しているように思えた。4位の「あん」は、小さなどら焼き屋を舞台にした地味な作品。主演が樹木希林と永瀬正敏でなければ、ここまでの味わい深さはなかっただろう。2015年の10大ニュース(読売)をみると、「大村さん梶田さんノーベル賞」「ラグビーW杯3位」「ISが日本人2名殺害」「マイナンバー開始」「関東・東北豪雨」「安全保障関連法成立」「北陸新幹線開業」「横浜マンションの杭データ偽装」「TPP大筋合意」「東京五輪エンブレム問題」とある。これ以外にも色々な出来事が日々発生し、十分に咀嚼する間もなく次のニュースが飛び込んでくる。その繰り返しの中で、全く見向きもされない地味な人々に光を当てたのが河瀬監督の「あん」である。知らぬ間にこわばっていた心がほぐされるような感じの秀作である。5位の「WE ARE perfume」は、彼女たちの3度目のワールドツアーを追ったドキュメンタリー映画。ファンでもなく、楽曲もあまり知らず、純粋に映画として鑑賞したのだが、臨場感あるステージと舞台裏の素顔の対比がとても興味深くみられた。今や世界的な人気ではあるが、そこに至るまでは決して平坦な道のりではなく、メジャーになった今でもファンを楽しませるために涙ぐましい努力を続けている。無機質な感じの音楽とは裏腹に、彼女らの人間的な温もりがファンの心に届いているのが伝わってきて、深く感銘を受けた。
 上位5位以外で最も印象的だったのが、「マッド・マックス 怒りのデス・ロード」だろう。前作から27年ぶりに製作されたシリーズ4作目で、監督はジョージ・ミラーである。「何を今更?」と思った人ばかりだろうが、これが空前のヒットを記録し、批評家からも大好評だったのである。敵味方に分かれて鬼ごっこをしてるだけの話でありながら(笑)、一瞬たりとも飽くことなく楽しめる。今年はスパイ映画も充実していた。シリーズ第5弾「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネーション」、ダニエル版ボンドの第4弾「007/スペクター」、コリン・ファースがスパイに挑んだ「キングスマン」、いずれも面白かった。とりわけ新顔の「キングスマン」は、先が読めない新鮮な面白さがあった。世界的なお祭りムードで迎えられた「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」は、新たに始まる第3部の第1章「エピソード7」に当たる作品。一時は、ジョージ・ルーカスが製作を断念したとの噂もあったが、満を持してのスタートに世界中が熱狂した。J.J.エイブラハム監督の手堅い演出・脚本で、十分楽しめる仕上がりだった。今年最も残念だった映画は、三谷幸喜監督・脚本の「ギャラクシー街道」だろう。いつも通りオールスターキャストで臨み、宇宙を舞台にしたドタバタ喜劇が展開されるのだが、笑いが上滑りしたり、下品過ぎたりで、従来の三谷作品にあったような心の底に沁みてくるような笑いではなかった。その三谷さんが2016年の大河ドラマ「真田丸」の脚本を執筆しているが、こちらの方は面白く、視聴率20%超えの順調な滑り出しとなっている。三谷ファンとして、大いに期待したい!
 最後に、DVDで観た作品について、少しだけ触れておきたい。DVDで観るのは、古い映画や劇場で見損ねた映画などである。今年一番の収穫は、「2001年宇宙の旅」(68)かもしれない。過去に2度観ているが、その面白さが今回初めて少しだけわかった。あくまで少しだけ(笑)。我々にとってはすでに過去になってしまった2001年がまだ近未来だった頃の作品である。猿から進化し、やがて宇宙船を作り、そこには人工知能をもったコンピューターと人間が対話する世界がある。コンピューターはすでに意思を持ち始めており、太古の昔、「未知」の象徴(あくまで僕の想像)であるモノリスに関心を示す猿が進化して人間になったのと重なる。相変わらず難解なのだが、この作品に登場したコンピューターHALは、今、サイバーダイン社(本社:つくば)の主力商品サイボーグ型ロボットの名前になっていて、不思議な既視感を禁じ得ない。それから、シリーズものを2つ見始めている。一つがリチャード・リンクレイター監督の「ビフォア・サンライズ」(95)に始まる3部作。旅先で出会った男女の9年後を描いた「ビフォア・サンセット」(04)では、同じ俳優が9年後を演じている。さらに9年後の「ビフォア・ミッドナイト」(13)も同じ手法で撮られている。2作目まで見たところである。それから、ジェニファー・ローレンス主演のヒット作「ハンガーゲーム」シリーズも見み始めてしまった。こちらも4作のうち2作目まで見たところ。独裁国家パネムでは反乱抑止を目的に12地区から各々若者が2名選出され、殺人サバイバルを生き抜いた1名だけが助かるという酷い設定で、一般的な評価も低く、ずっと敬遠していたのだが、J.ローレンス見たさで見始めたら、案外、面白かった。「こんな残酷な作品なんて」と避けていたのに、結局人間は過去にも現在でも同じような、もしくはそれ以上の行為をやっていることを思うと、見ておく意味はあるように思うようになった。他にも特によかったのを列記すると、宮本信子主演の「眉山」、松坂慶子主演の「蒲田行進曲」と「男はつらいよ/浪花の恋の寅次郎」、アキ・カウリスマキ監督の「浮雲」、韓国映画「ハローゴースト」などなど。まだまだ観てない名作がたくさんあるので、色々なジャンルの作品を観ていこうと思う。


2015
cineMa
top 5
1 きっと、星のせいじゃない(米国) THE FAULT IN OUR STARS
2 黄金のアデーレ(米国・英国) Woman in Gold
3 アメリカン・スナイパー(米国) AMERICAN SNIPER
4 あん(日本)
5 WE ARE perfume(日本) WORLD TOUR 3rd DOCUMENT