2008
cineMa
top 5
1 ゲットスマート Get smart(米国)
2 ザ・マジックアワー The magic hour(日本)
3 庭から昇ったロケット雲 The astronaut farmer(米国)
4 おくりびと(日本)
5 魔法にかけられて Enchanted(米国)
蓋を開けてみれば、今年は「崖の上のポニョ」の大ヒットばかりが印象に残った。宮崎駿作品はとても好きだが、「となりのトトロ」とか「崖の上のポニョ」といったほのぼの系はやや苦手ではある。それでも、ポニョが宗介君を捜しに、波の上を疾走するシーンはとても壮大で美しく、心打たれるものがあった。「神経症と不安の時代に立ち向かう」と宮崎監督のメッセージにあったが、とにかく大人が病む時代である。大切な何かが不足し、なくても済む何かが過剰という気もする。先が見えないのはいつの時代も同じはずなのに、なぜ、今は希望ではなく不安なのだろうか?
2008年は、1月の「Little DJ」から11月の「ブタがいた教室」まで20本の映画をみた。以前のように一日に2本みることが減った分、本数も少な目だった。その中で、「ゲットスマート」は、理屈抜きに面白かった。アクション、ロマンス、コメディがバランスよく配合されていて、息つく間もなく楽しめた。脚本が実によくできているのだが、キャスティングも一押しの大きな理由である。おとぼけのスティーブ・カレルと知性あふれる美女、アン・ハサウェイのコンビは、ぜひまた見てみたい!60年代に大ヒットしたTVドラマ「それ行けスマート」のリメイクということで、何となくノスタルジックな雰囲気もよかった。笑えるという点では、三谷幸喜監督の「ザ・マジックアワー」も楽しかった。ノリ的には前作の「ザ・有頂天ホテル」と同じで、ドタバタ喜劇の中にホロリとさせるペーソスが感じられる作品である。今作はとにかく佐藤浩市がよかった!本物のギャングの世界を映画の撮影と思い込み、ビニル製の銃でボスを脅し、ナイフをぺろぺろ舐め、そして、スクリーンに映った自分の姿に涙する。かなり、感情移入してしまった。ビリー・ボブ・ソーントン主演の「庭から昇ったロケット雲」はほとんどヒットもせず、それほど観客のポイントも高くはなかったようだが、個人的にはツボだった。話の流れは、「世界最速のインディアン」(05)にも通じるが、人生の終わりが見えてきた男が、夢の実現にむけてひたむきに生きる話である。人から変に思われても自分の夢を諦めない生き様はとてもカッコイイし、惹かれるものがある。夢を手に入れた主人公の顔が本当によかった。モントリオール世界映画祭でグランプリを受賞した「おくりびと」は、実に日本的でいい映画だった。納棺師という身近でありながら、ほとんど知ることのない仕事に光を当て、人間の生と死が交錯する瞬間のドラマが実に丁寧に描かれていた。意外にもコメディー的な側面もあってとても笑えたが、表面的には気付かないような人間の奥行きを見事に見せてくれる作品である。ディズニー映画の「魔法にかけられて」は、いかにもディズニーっぽい派手な映画で、男一人で見に行くのは恥ずかしかったが、とてもよかった。主人公が単なる夢見がちな乙女のようでいて、実はしっかりとした信念をもっているというところにも感銘を受けた。とっても幸せな気分にひたれる作品である。他の15作品もそれぞれによかったが、全体として、度肝を抜かれるような映画には出会えなかったようにも思う。また、2009年に期待だ!
映画の上映時間はほんの2時間ほどだが、そこには実に多くの人と時間とお金が費やされている。作り手のひらめきや情熱や才能がギュッと凝縮された、まさに汗と涙の結晶である。観客は、その濃縮されたエキスを自分なりに還元して、感情を揺さぶられたり、忘れていた気持ちを思い起こしたり、新たな考え方をしてみたりする。期待していた作品がいまいちだったり、たまたま見たらすごくよかったといったところは、一種ギャンブルのようでもある。でも、それは、人生そのものとよく似ている。常に順風満帆ってことはない。2008年は、米国の金融破綻に端を発し、急激な景気悪化に見舞われた。「派遣切り」という恐ろしい言葉が飛び交い、深刻な不況が2009年に持ち越されている。そもそも景気には波があって、悪くなったときを想定してセイフティネットを用意しておかなかったのが問題だと、先日みたテレビ討論でいわれていた。そのとおりに違いない。希望もあり、不安もある。希望があるときに足下を見直し、不安なときは、遠くをみてみる必要があるのかもしれない。映画には、その両方の効能があるんじゃないかという気がする。たかが娯楽、されど、映画はすばらしい。