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「永遠の0」
放送作家だった百田尚樹のデビュー作(06)にして、
400万部を超える大ベストセラーが原作である。
575ページにもなる大作を2時間余の尺に収めるのは、土台無理な話。
これまで映画化やドラマ化のオファーを全て断ってきた百田氏が
「ALWAYS 三丁目の夕日」のファンだったこと以上に、
山崎監督と林民夫氏のシナリオが決め手になったという。
確かに、脚本がいい。
そして、キャスティング、演出と三拍子揃ってよく、完成度はとても高い。
主人公の宮部久蔵(岡田准一)は、「海軍一の臆病者」だった。
というところから、この物語は始まる。
祖母・松乃(井上真央)の死をキッカケに、自分の祖父・賢一郎(夏八木勲)とは別に、
血縁上の祖父・久蔵がいたことを知った佐伯健太郎(三浦春馬)の視点で、
現代の平和と戦時中の過去が対比されていく。
その三浦春馬がよかった。
ごく平凡な若者が実の祖父のことを調べていくうちに、
祖父の人生、戦時下の状況が少しずつわかってくる。
観客は、彼と共に過去に遡り、特攻の悲惨さ、戦争の無意味さに心を打ちひしがれ、
彼と共に涙し、彼の成長に安堵し、感動する。
映画のラスト近くで、健太郎が街ゆく人々を眺めている目の前を
久蔵が乗った零戦が飛び抜けていくシーンが素晴らしかった。
感動的なシーンは幾つもあったが、個人的にはこのシーンが一番印象深い。
「あの戦争を戦った人たちが歴史から消えていく。戦争の話を聞いてきた僕らの世代が
真実を次の世代に語り継ぐ必要がある。」と百田氏も書いているように、
この物語は、戦争を語り継ぐことに主眼が置かれていると思う。
今ある当たり前のような平和の意味を強く問いかける作品である。
2013年12月、日本では様々な変化があった。
6日、日本の安全保障に関わる措置として特定秘密保護法が多くの国民の反対を押し切って成立。
23日、武器輸出三原則の例外措置として初めて武器(銃弾)を国連を通じて韓国軍へ無償提供。
そして26日には突如、安倍晋三首相が靖国神社を参拝し、
中韓ばかりか米国、欧州、国連事務総長などから批判が渦巻いている。
百田氏は、「国のために亡くなった英霊に手を合わせ、感謝の念を捧げるのは、国民の代表として当然だ。
中国や韓国が批判することは内政干渉にあたる」と語ったようだ。
この問題は、難しい。
いみじくも「永遠の0」が活写したように、過去の犠牲の上に現在が在る。
その事実を忘れてはいけないし、同じ過ちを犯さないためにも常に学び続ける必要がある。
しかしながら、その「過去」は国によって、人によって、時代によって、色々な見方ができてしまう。
日本にとっての英霊は、相手国にとっての加害者である。
自国の防衛に備えるのも当然だが、
その同じ武器が侵略にも使用できるから周辺国は警戒する。
戦後、敗戦を経験した日本が徹底して貫いてきた平和主義。
勿論、臆病者だからではなく、二度と無益な戦争で命を無駄にしないためである。
映画のラストシーン、米国空母タイコンデロガに向かって急降下していく久蔵の表情が目に焼き付いていて、
思い出すと涙がでてくる。
お国のために死んでいくシーンである。
国のために国民がいるわけではないはずなのに…。
109シネマズ湘南
DATA
日本映画/2013年/144分/シネマスコープ/ドルビーデジタル
監督・脚本・VFX(山崎貴)/製作(市川南、畠中達郎)/
脚本(山崎貴、林民夫)/原作(百田尚樹)/音楽(佐藤直紀)/
出演(岡田准一、三浦春馬、井上真央、吹石一恵、風吹ジュン、田中泯、橋爪功、夏八木勲)/
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