at MUSIC RESTAURANT LA DONNA
in 2014/8/9 SAT 19-21:30
90年代に王様というミュージシャンが直訳ロックで一世風靡したことがあった。色物系とはいえども、大ヒットアルバム「深紫伝説(ディープ・パープル)」の演奏は本格派だった。今も活動は続けているらしいが、それとは似て非なる関西弁でジャズを歌う「ドリタニ」が今、知る人ぞ知る人気を博している。Dollyことキムラ緑子とTannyこと大谷亮介の二人の本業は俳優だが、歌もなかなかうまい!ドリタニライブは7年ほどになるようだが、NHK連続テレビ小説「ごちそうさん」で緑子さんがブレイクしたこともあって、一気にライブの知名度も急上昇していると聞く。さて、その実態やいかに…。
今夏、デング熱の国内感染が発見され大騒ぎとなっている代々木公園にも近い原宿のライブハウス「ラ・ドンナ」は、中高年の観客で埋め尽くされていた。すでに昼の部が終わって、いよいよ3日連続ライブの最終回である。客席には、ドリタニの友人である山田まりやさんの姿もあった。テレビで見るより小柄で美人!ちなみに受付をしていたインド風美女が大谷さんの奥さま。何だかとってもフレンドリーな雰囲気である。その受付で販売していた歌詞集(写真右)は、二人のサイン入りでたったの500円。「♪Besame
Mucho」の替え歌「小雨部長」や「♪Fly Me to the Moon」の替え歌「フライもんなんやもん」などの歌詞が31曲も収録されていて、超お買い得である。
ステージまで2〜3mのところに二人が登場。拍手喝采!そして、ドレス姿のドリーさんの美しいオーラに会場どよめく。「私、ウィッグが似合うんですよ」という言葉にウソはなく、「ごちそうさん」のいじわるな和枝さんとは別人かのような美貌に驚く!二人は外人さんで、タニーはハワイ・オアフ島生まれ、ドリーは米国ラスベガス生まれという設定なので、しばらくは英語でのMCが続いた。「もう、日本語にしてええですか」と途中で泣きが入ってからは、バリバリの関西弁トーク。二人とも兵庫の出身なので、ホンマあっつーまに夫婦漫才のノリに変わってまいました。こっちの方が聞いてる方も楽である(笑)。
トークだけで十分楽しかったが、歌も素晴らしかった。替え歌の歌詞は、すべてギターの東野ひろあき氏によるもの。いずれもなかなかの出来だが、特に挙げるならば、「♪Lovin'
You」が最高だった。だってサビの歌詞が「草津の湯 有馬の湯 伊香保の湯 白浜の湯 じゃばじゃばじゃば〜 あ〜あ〜〜」だからねぇ(笑)。「想い出の三軒茶屋」もよかった。個人的にも大好きなバラードの名曲「♪I
Left My Heart In San Francisco」が「I Left My Heart In San Gen Jaya」になるのも必然かな、と思えてしまう。歌も巧いが、バックバンドも充実している。バンマスの赤石香喜(P)、佐藤孝紀(B)、東野ひろあき(G)、藤崎卓也(per)、河野俊二(D)、そして、タニーのウクレレを加えて、総勢7名の演奏はギャグではなく本物指向である。
途中休憩を挟み、その間に、ドリーさんはお色直して再登場!なんと、トランペット持参である。マウスピースを使わないので音を鳴らすだけでも難しい楽器だが、なかなかの腕前であった。トークも面白く、放送中の刑事ドラマ「東京スカーレット」での髪型や鞄のかけ方にまつわる裏話や新幹線でスマホをカチカチさせていた男との一悶着やら暴走族に親切にしてもらったエピソードなど、ドリーさんの不思議キャラは半端なく凄かった。改めて、日本人の多様性を再認識してしまう。原曲がいずれも名曲揃いということもあって、替え歌でなくとも十分聴き入ってしまう内容だったが、それにプラスして楽しいトークや小芝居があったりで、実に密度の濃い、これぞ大人のエンターテイメントという感じであった。
終演後、少しだけ、ドリタニとお話することができた。お二人ともに気さくで、とても温かい人柄だった。こんな風に歳をとれたらどんなにかいいだろうか。人生のすばらしき先輩に出会えて、とても幸せな気持ちに包まれて帰路についた。やっぱ、努力してでも愉しまなきゃいけませんね。ごちそうさまです。ありがとうございました。