地上絵
 
 
 
 
 初秋の昼下がり。
息子が遊ぶとなりで、遊んでいた。
無数のアリが行列をつくって、足下を歩いていく。
「やったー。ゲットだ!」と息子が声をあげた。アリが1匹、息子の親指と人差し指の間でもがいていた。
 
 近くの子供が吹いたしゃぼん玉が風に乗って飛んできた。息子はすぐに立ち上がると、右に左に飛び跳ねながらしゃぼん玉を追い駆けていった。しゃぼん玉と息子が戯れるその向こうに、綿雲が2つ、3つと流れていった。
 
 ふたたび足下に目をやり、手にした棒切れで自動車を2台描いた。
 そこへ、息子が息を弾ませて帰ってきた。
わたしの描いた車を見るなり、石で塗りつぶそうとする。
いや、そうではなかった。そうではなく、息子は車のボディに色をつけてくれたのだった。
白く乾いた土の上に、親子合作の地上絵が完成した。