「鉄道員」
 
 
 
  映画「鉄道員」を観て、これは昭和を生きた男たちへのレクイエムなのだという気がした。
物語の前半、乙松の前に初めて少女が現われるシーンがある。
原作を読んで、これが雪子かと想うと、もう泣けてきた。
僕は高倉健さんを知らない世代だが、それでもすぐにこれは健さんを映画化したものだと感じた。
乙松の言葉は、台詞というより生の言葉のように、演技というより健さん本人のように見えた。
あまり多くを語らぬ言葉と言葉の間にじっくり人生が語られている。
  この映画をみながら、僕は父を想っていた。
昭和を生きた男とは父のことである。
僕たちが次の時代の扉を開けるとき、ひとつの時代の幕が下りる。
未来を希望する陰に、いいようのない淋しさがある。
映画を見終わってすぐに父へ手紙を書いた。
「鉄道員」いいから、絶対観てくれよって。
お父さん、ありがとうの気持ちを込めて。
 
ーこのエッセイは、シネコンクールで「ぽっぽや賞」を受賞しました−
 
 
DATA
東映映画/1999年/監督(降旗康男)/脚本(岩間芳樹・降旗康男)/主演(高倉健)
/主題歌(作詞:奥田民生、作曲・編曲:坂本龍一)